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「……婆さん、遅いな。」

「……あぁ。」

なんとも言えない気まずい雰囲気だ。
本当はこんなことも言いたくなかったけど、しばらく黙りこくっていたら、つい口が滑ってしまってたんだ。



「あ…えっと……あ、あのさっきのコーランダーっていうのは何なんだ?」

話題を逸らせようとして、俺はどうでもいいことを訊ねてみた。



「あれは高級な薬草茶だ。」

「え?そ、そうなんだ。」

「滋養強壮に良いとされている。」

「へぇ…」

ただ渋くてくそまずいだけの茶だと思ってたら、けっこう良いものだったんだな。



「腹減ったな。」

「パンでも食べたらどうだ?」

「そうだな。」

俺はバッグの中からパンを取り出し、ひとつをユリウスの前に差し出した。



「私なら良い。」

「そう言わずに食べとけって。
さっき、精気を抜かれたんだろ?
これからも元気でいないとアレクシスを探しに行けないぞ。」

俺がそう言うと、奴はしばらくパンをみつめていたが、やがてゆっくりとそれにかぶりついた。



「そうそう。腹が減っては戦は出来ぬ…ってな。」

俺も、同じようにパンにかぶりついた。
ちょうど、その時、婆さんが居間に戻って来た。



「なんじゃ、そんなものを食べて…」

「あ、出来たんですか!?」

「そんなに早く出来るか。
もうしばらくはかかる。
わしも腹が減ったから一休みしようと思うてな…
今、夕飯の用意をするから少し待っておれ。」



夕飯…?夕飯をふるまってくれるのか??
最近はろくなものを食べてなかったから、その言葉は俺に甘く響いたが…



魔女が作る夕飯って一体どんなものなんだ?
まさか、ヤモリとかコウモリを煮込んだものじゃないだろうな。
考えただけでぞっとする。
でも、今更、いらないなんて言いにくい。
今の所、本当に魔法のコンパスを作ってくれてるみたいだから、怒らせるわけにはいかない。



そのうち、なんだかいいにおいが漂ってきて…俺の腹の虫がぐうと鳴いた。




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