「悪態も吐きたくなるさ!
俺は、今日、エリーズにプロポーズをしてそれを承諾してもらった。
人生最高の日だったというのに、たかがフクロウのことでなんでこんなにがみがみ言われなきゃならないんだ!」

「ほぉ…プロポーズをな…
おまえのプロポーズを受けるとは、相手は相当頭のイカレた女なんだろうな。
もしくは、誰も相手にしないようなご面相か…」

そういうと、その男は俺を横目でちらりと見て、小さく肩を震わせた。



「て…てめぇ…!
エリーズを愚弄すると許さねぇぞ!
エリーズはな!誰よりも美しくて賢い最高の女だ!」

「まさか。そんな最高の女が、おまえのような男を相手にするはずがない。」

「こ、この野郎!よくもそんなことを…
おまえこそ、そんな性格してるからフクロウしか相手にしてくれないんだろう!
……可哀想になぁ…」

俺の言葉に男は相当頭に来たらしく、こめかみに浮き出た血管がぴくぴくと動いていた。



「……そうか…」

感情のこもらないその言葉が妙に無気味に感じられた。
さらに気味の悪いことには、男は不意に立ち止まり、目を閉じて胸の前で両手を組み、俯いて口の中で何事かを低い声で唱え始めた。



「お、おまえ…一体、何を…」



そいつが何をしようとしているのかはわからなかったが、ただ、なにかとても危険なことだということだけは俺の本能が知らせた。
急に大きな岩が転がり落ちてきて、間一髪の所で逃げ出したあの時と同じような胸騒ぎ…



(とにかく逃げなきゃ…)



しかし、俺の足はまるで木の棒に擦りかえられたかのように、俺のいうことを全く聞かない。
それだけじゃない。
身体が燃えるように熱く、俺の心臓は早鐘を打ち出し、俺は懸命に息をする。
それでも、意識は朦朧とし…
遠退いていく意識の中で、俺はきっとそいつが呪術師か何かで、妙な呪いをかけられたんだと判断した。
何年もの時間をかけて、せっかくエリーズにプロポーズを受けてもらったっていうのに、そのまま死んでしまうとは俺はなんて不幸なんだ…!



(畜生〜〜〜っっ!)



おかしな奴と出会ってしまったことに…そして、俺の不幸な運命に激しい怒りの炎を燃やし…
俺はそのまま意識を失った。




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