「ど、どういうことなんだ!
ただのフクロウじゃないっていうのは…」

「それは……」

男は開きかけた口をすぐにまたつぐむ。



「だいたい、おまえ何者なんだ!?
なんだってこんな真似が出来る!?」

そう言った時に俺ははっと気が付いた。
そうだ…この男は俺になんらかの呪いをかけやがった。
こんなことが出来る者が、普通の人間であるはずじゃない。
ってことは、こいつは…

俺は、急に恐怖を感じ、そっと後ずさりした。



「……どうした?」

俺の行動に男はすぐに気付いた。
考えてみれば、今の俺はかよわい女だ。
とてもこんな男に力で適う筈はないし、走って逃げたにしろきっと捕まっちまう。
俺は、逃走も戦う事もあっさりと諦めた。



「おまえ……もしかしたら、あ…あ…悪魔か?」

男は俺を一瞥し、失笑する。



「違う。
……おまえはエルフを知っているか?」

「エルフ?
あぁ、知ってるぜ。
よく御伽噺に出て来る奴だろ?
森の中に住んでる耳のとんがった…」

男はそれを聞くと、呆れたような表情で肩をすくめた。



「な、何なんだよっ!」

「……まぁ、そういう姿で表されることが多いのは事実だな。
実際の所は少し違うのだが…」

「違う…?
なんで、そんなことわかるんだ!?」

「……それは、私がそのエルフだからだ。」

「え”っっ!」



馬鹿馬鹿しい…
エルフなんて者は、御伽話に出て来る者であって現実にはそんな者はいない!
……今までの俺ならきっと即座にそう言ってた筈だ。
しかし、今の俺は今までの俺とは違う。
女だ…こいつの呪いで男だった俺が突然女になっちまった。
そんなことが出来るってのは……本当にこいつがエルフだってことなのか!?
理屈ではそう思いながらも、それでもまだどこか信じられない。




(……そうか、わかったぞ!
これは夢なんだ!
俺は、酔っ払っておかしな夢を見てるだけで、こんなものはすぐに覚める!
うん、そうだ!)


俺は、思いっきり自分のほっぺたをつまみあげた。



「い、いてぇーーー!」

それは、目が覚めるほどの痛さだったが、俺の身体や声には変化はなく、元の男に戻ることはなかった。


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