「……今の仕草は一体何なんだ?
まじないのようなものか?」

自称エルフはきょとんとした顔を俺に向けてそう訊ねた。



「な、なんでもねぇ!」

俺は痛む頬をさすりながら、口だけはなんとか強がった。
自称エルフは、ますます不思議そうな顔をして小首を傾げる。

そういえば…確かにこいつはどこか人間離れした綺麗な顔をしている。
……そうだ…初めて見た時にも俺はそんな風に感じたんだ。
普通の人間とどこか違うって…
それは言葉で言い表すのは難しい、とても感覚的な印象なんだけど、俺のそのカンは当たってたってことなのか…?
耳は尖ってないけど、こいつは、本当にエルフ…!?



「……なぁ…もう一度聞くけど…
おまえは本当に…エルフなのか!?」

「あぁ、その通りだ。
考えてもみろ。
私がおまえにそんな嘘を吐いて、どんな得があると思う?
それに、おまえを騙そうとするのならもっとまともな嘘を吐くとは思わないか?」



確かにそうだ。
エルフなんて言っても、はい、そうですかとそれを鵜呑みにする奴はいない。
笑われるのがおちだ。
つまり、あえて、そんなことを言うのはそれが本当のことだから…?



(……あ、そうだ!)



「おまえが何者かってことよりも、もっと重要なことがあった!
てめぇ、なんで俺をこんな……あ、そうか。
それは、俺がフクロウを逃がしたからだって言ってたな。
……きっと、あのフクロウはおまえにとって大切なもんだったんだな?
だったら、そのことは謝ろう。
俺が悪かった。許してくれ。
白いフクロウは珍しいからそう簡単にはみつからないかもしれないが、俺が似たようなのを必ず捕まえてやる。
な、それで許してくれないか?
だから、おまえもこんな悪ふざけは早くやめて、今すぐ俺を元の姿に戻してくれ!
頼む!」

両手を合わせて懇願する俺を見下ろし、奴は小さく鼻で笑った。



「……アレクシアは普通のフクロウではないと言ったのを、もう忘れたのか?」

エルフの態度に俺はカチンと来ていたが、俺は懸命に堪えた。
今はとにかくこの呪いを解いてもらわなくてはならない。
それまでは、こいつを怒らせないようにしなくては…



「あぁ、よくわかってる!
あのフクロウ……アレクシアだっけ?
そうだ!アレクシアは、最高のフクロウだ。
きっと、おまえにとっては友達みたいなもんだったんだな?
うんうん、わかる、わかる。
でも、逃げてったものは仕方がねぇ…
だから…」

「アレクシアは……鍵なのだ。」

俺がまだ喋ってる途中で、エルフはわけのわからないことをぽつりと言った。


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