十年来の幼なじみ。しかも女の子顔負けの美形。そんな単語が続けば大概の物語は見事な恋模様を描く。
しかし現実は厳しいもので、実際そう上手くはいかないのである。

「そう思わないかい一郎太」
「は?」

ぽつぽつと、雨粒が窓を叩く。いつもこの時間帯なら、一郎太含め我が校のサッカー部は練習に打ち込む時間なんだろうけど、この天気ではそれも出来ない。
私は一郎太の部屋のベッドであぐらを掻いて、ほっぽりだしてあったマンガをペラペラ見ながら言った。脈絡のない第一声に一郎太は片眉を上げる。まぁ、そりゃそうだ。

「もしも私が、髪がさらっさらで目元ぱっちりの、世話焼きでお淑やかなキュート美人だったら」

そのまま続けると、一郎太はあからさまにちゃんちゃらおかしいと言った表情をする。当たり前だろう、幼なじみと言ってもこうやって男の部屋のベッドであぐらを掻いてるような女をお淑やかとは呼ばないし、私は化粧もしないから目元ぱっちりなわけでもない。おまけに髪の毛は犬っ毛。今まで何度一郎太のサラサラヘアーを羨んだことか。

「私がそんな女の子だったら、今頃一郎太とのやっすいラブストーリーでも始まってんだろうなーと思って」
「…アホか」

一郎太はそう言うと、手元のスポーツ雑誌に目を戻した。うん、自分でも分かってる。何言ってんだろ私。

「でも実際どう思う?私がそんな子だったら、一郎太惚れてた?」
「……」

視線は雑誌に向けたまま、一郎太はしゃべらない。何だろう、返事するのが億劫なくらい嫌な質問ってこと?そうだったら流石に傷つくぞ。
すると、一郎太がもぞりと動いた。そこで私は気付く。彼の持つ雑誌のページが、さっきから一向に進んでいないと言うことに。

「……俺は、今のお前にも十分惚れてるけど」
「……え」

私はマンガを取り落とす。肩越しに見えた一郎太の耳は真っ赤だった。


少女のドラマ
title Chien11