鬼道はいつもゴーグルを通して世界を見ている。
学校も、サッカーも。無論、私のことも。
「外そうとか思ったりは?」
「ないな」
「さいですか」
即答だった。ちょっとつまらない。
大体、私たちは一応曲がりなりにも付き合ってる者同士なんだからもうちょっと気の利く台詞の一つや二つ、…無理か。
「お前今失礼なことを考えなかったか?」
「滅相もないですいててててほっぺを摘むな!!」
じりじりと伸びていく頬の肉の痛みに悲鳴を上げる。手加減しろよ、お前ホントに私の彼氏なのか?彼氏っていうのはもっとこう、こう…アレな筈なんだよ!
「言葉のボキャブラリーが少ないというのも困りものだな」
「その哀れみの視線はやめろ」
ふぅとあからさまにため息を吐くと、鬼道はキュッと上履きを響かせて私に一歩近づく。
因みに現在地点は屋上。誰もいない昼休みの屋上を独占とは我ながら贅沢なことをしていると思う。
とん、と壁に追い込まれながら頭の冷静な部分が呟いた。
「言っておくが、ゴーグルを外さないのはお前の為でもあるんだぞ」
「は?何で」
そうなるの、と言おうとした途端、ゴチンという音と衝撃。
鬼道のゴーグルが私の顔にぶつかった音だった。
「い、い、いってえあうえぅ」
「…やっぱり無理か」
顔を押さえ悶える私を冷静に観察する鬼道。おい何がやっぱりなんだまず先に謝れよ!
キッと睨み上げると鬼道は肩を竦めて、ゴーグルに手をかけた。
…あ。赤い、目。
「─分かったか?これを付けてないと、歯止めになるものがないんだ」
「…そうですか」
私の唇をかすめ取った後、鬼道は赤い目を細めて少し口角を上げて言った。
赤くて眩しい
title エッベルツ