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気づいたときには甲子園は終わっていたようだ。甲子園の道を絶たれた高校から次のスタートを切っていく。

そんな光景を取材したいということで、"月刊野球王国"の記者さんが取材に来るらしい。しかも大きなページコマをつかって御幸を取り上げたいとのこと。練習試合の相手校のデータをまとめたものを御幸と川上くんに説明しているとき、わくわくした様子で取材が決まったことを部長が御幸に伝えに来た。御幸は少し面倒くさそうな顔をしたけど、取材が来るのは決定事項だったようで免れることはできないようだ。
「取材される側の極意ってあんの?教えて芸能人」という御幸に対し「自然体で問題ない」と答えたが、御幸が自然体そのもので言ったら嫌味ったらしい回答になりかねないな、とアドバイスの仕方を間違えたとあとから悔やんだ。







そんな取材が今日来るらしいけど、私にはなんの関係ないことで、取材されるのは片岡監督にキャプテンの哲先輩に御幸。あとは練習のレポートや練習風景の写真を数枚撮っていかれるとのことだった。
練習もそろそろ休憩に入るためドリンクやタオルの準備をマネージャーたちでやっていると、幸子ちゃんと唯ちゃんは「取材来るのってすごいよねー」は言った。でもそれに対し「名門校ではあるからね。たまに来るから珍しいものでもないわよ」と貴子先輩が微笑みながら冷静に答えた。私は「もっと取材きてほしいですよねー」と答えながら重いジャグを持ち上げると、「そうね。もっと注目されてほしいし、されるようになってもらわないとね」と貴子先輩はいとおしそうに言った。
たくさん勝てば取材も増える。そのためのサポートは全力で頑張らないと。と強く思ったとき、私たちの元へ駆け寄ってくる足音が聞こえた。


「あの!」

「?」

「あー!やっぱり鈴森かよこだ!」


そこには髪をひとつに束ねた長身の女性がいた。見たこともない人だったけど、肩から掛ける一眼レフのカメラで、ああ…取材の人かとすぐにわかった。「本物はやっぱり違う!かわいい!」と謎に褒められたけど、女性の後ろから来る少し小柄でふくよかな男性が明らかに彼女の上司で、彼女の暴走振りに呆れているようだった。


「なんであなたはここにいるの!?」

「へっ」


聞いている意味は伝わったけど、なんだか哲学的な尋ね方にも聞こえてしまって反応が何テンポか遅れた。
私が回答に困っていると、女性記者さんも謎な質問をしてしまったことに気づいたのか恥ずかしそうに微笑んだ。


「ごめんなさい!最近テレビで見かけないものだったからどうしたのかなぁって思ってて」

「あ、高校は学生生活楽しみたいと思っていたので…」


控え目にそう言うと女性記者さんが「干されたわけじゃなかったね!よかったぁ」と、言いにくいセリフをあっけらかんと発した。
その発言に対して、女性記者さんの上司のような男性記者さんが「失礼だろ」とどついた。特に何とも思わなかった私は「気にしないでください」なんて、逆に気にしてしまいそうなフォローを入れてしまった。
ふと視界の片隅に仕事を進めつつも私と記者さんのやり取りが気になる貴子先輩・幸子ちゃん・唯ちゃんの姿が入った。
そうだ、私も仕事中だ。


「じゃあ、私はマネージャーの仕事あるので…」

「え!?やっぱり今は青道のマネージャーやってるの!?」


話が途切れない気しかしない。
女性記者さんはわくわくした様子で男性記者さんに「この話も記事にしませんか!」というのを訴えていた。


「かよこちゃん。あとは私たちがやっておくから大丈夫だよ」


見事に捕まってしまった私がマネージャー業を気にしているのに気づいたのか、貴子先輩が私の肩に手を置き、言葉をかけてくれた。
記者さんたちに気を遣わせないために、こそっと耳打ちをしてくれた貴子先輩は流石だと思う。


「なんかすみません…」

「なになに。かよこちゃん怒られてるの?」

「あ、御幸」


休憩時間に入ったのか、私たちのそばにぞろぞろとみんながやって来た。すみません、と貴子先輩に頭を下げていた姿を見て、御幸は私が怒られているものかと勘違いをして声をかけてきた。そのわりにはにやにやとしていて、怒られてる私を面白がっている様子にしか見えなかった。
みんなにドリンクやタオルを配る貴子先輩たちをちらりと見て、やっぱり手伝いたいなぁと思った瞬間、貴子先輩と目が合い、微笑みかけられた。気にしなくていいということだろうか。そんな風に思った瞬間、「御幸くん、かよこちゃん」と女性記者さんに名前を呼ばれた。


「2人の写真撮らせてもらってもいいかな?」


やはり私のことを記事にするのを捨てきれなかったようだ。取材とかは慣れているから嫌とかそういうのは全くないけれど、いちマネージャーが写っても大丈夫なのだろうか。


「あー…俺はなんでも良いですけど、鈴森は事務所の都合とかってあんの?よく分かんないけど」

「伝えておけば大丈夫だとは思うけど…」

「大丈夫!その辺りは任せておいて!」


嬉しそうに言う女性記者さん。
でも野球雑誌に私みたいなのが載ったところで、野球雑誌を買うのは御幸のように"鈴森かよこ"を知らない人たちだろうから需要はないと思うということは伝えようとして止めた。


「いやぁー…鈴森の恋人って勘違いされて週刊誌に狙われたらどうしよう」

「全力でもみ消すから安心して」


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