水たまり ◇◆ 2017/04/29 14:46

 昨日は空が泣いているような1日だった。穏やかな春の訪れは、未だに冷たい風が吹くことも多いこの地ではまだ先のことなのか。泣き空の下、風と雨を受けて桜はその花びらを散らしていた。
 雨は苦手だった。母との別れを思い出すから。雨が降れば、必ず水たまりができるから。
「晴れたね」
「うん、晴れたね」
 うってかわって、今日はご機嫌な空模様。柔らかな暖かい風が頬を撫でる。
 母がまだ生きていた頃から、どうにも雨上がりの水たまりが苦手だった。空に向かって開いた穴のように足を入れればそのまま吸い込まれてしまう気がして。いつもいつも、避けて歩いていた。
「さて、行こうか」
 けれど今は、水たまりには微笑む賢二郎の姿が映るから。だからもう、怖くない。たとえ落ちても。行き着く先が空の上でも地の底でも。怖くなんてない。

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