月島は見た ◇◆ 2017/01/03 10:18

 何で新年早々、この鬱陶しい面々と顔を合わせなければならないのか。月島は母親に無理矢理、被せられたネッグウォーマーに鼻先まで埋めて息をつく。そもそも初詣自体、山口に責付かれて松の内ギリギリに行くのが常だったのに。兄と山口、更には谷地が手を組み、人でごった返す神社に足を運ぶ羽目になった。今年の行く末はきっと禄なものではない。
 もうそろそろだと小銭を握り締める日向と谷地が羨ましい。前後左右の人垣しか見えない彼らは、自分たちが今、境内のどこに立っているか分からないのだろう。延々と連なる列は後方にばかり増え、前方のは一向に減っていないように見える。どんなに嫌でも、流れに身を任せる他ない。
「はぁ…」
「月島、ため息つきすぎだろ!神様に怒られるぞ!」
「…いいよねぇ、日向は。影山の背中と谷地さんの顔だけしか見えないんだから」
「バカにすんなよ!山口のアホ毛だって見えてる!」
「え、俺、日向からアホ毛しか見えないの?」
「山口うるさい」
「ごめんツッキー」
「あ」
「どうかした?影山くん」
「灰崎先輩がいる」
 だからどうしたと思いつつ、影山の視線の先を追う。月島も山口も、すぐにその姿を捉えることができたが、描写するのを躊躇った。何故ならば。
「男に腕回されてる」
 正しくその通り。日向と谷地のダブルサウンドの驚愕の声は、月島の耳を鋭く突いた。その不快さによる血迷った思考だろう。今すぐ人を掻き分けてその腕を払いたい、なんて。
 横から山口の視線を感じる。しかし、目を合わす気にはなれなかった。
「はぁ…」
 また1つ、ため息がネッグウォーマーに消えていった。

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