成田はすれ違った ◇◆ 2017/01/04 13:25
おみくじに「勝負事、避けるが吉」と書いてあったのにジャンケンをし、物の見事に1人負けを喫した成田は焼きそばとイカ焼きの屋台を回ることになった。焼きそばはタイミング良く受け取れたが、イカ焼きはそれまで焼いていた分が全部買われてしまっていた。なんとも運が悪い。待つ間、ケータイを弄ろうにも年越しのあけおめメッセージのやり取りのせいで上手く繋がらない。手持ち無沙汰のまま、仕方なく辺りを見回す。何処かに見知った顔はないだろうか。
「ニーチャン、お金も無いのに頼んだってか?」
「札も金だろーが」
「屋台で万札出すなんて、物を知らないにも程があるぜ」
トラブルの予感しかしない。そろりと様子を窺うとフランクフルトの屋台のオヤジと睨み合う男がいた。高校生だろうか。目つきの悪さと、レゲエ歌手のような髪形が、近付き難さを跳ね上げている。田中や西谷のような熱血ゆえのガラの悪さとは違う。
関わるまいと、着々と火が通っていくイカに意識を移す。美味そうな匂いに思わず目を瞑り、すんすんと鼻を鳴らした。
「祥吾、どこでカツアゲしてきたの。返してきなさい」
もうすっかり聞き慣れた声に驚き、フゴッと豚のように鼻が鳴った。イカを焼くオヤジにゲラゲラ笑われ、もう少し待っていろと慰められている間に、その声の主は成田の背を左から右に横切った。
恐る恐る、目を向けてみる。そこには見知った顔が1つ。
「灰崎何やってんだよ…!」
「はいよ、イカ焼きお待ち!」
引ったくるように受け取り、踵を返す。これは俺の手には負えない。
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