合宿メンツとアイス ◇◆ 2017/04/17 04:04
「クーラーボックスごとくれてやるぜ」どうだ、これが大人の財力だ!と高笑いする烏養に苦笑いしながら、武田は目の前にいる灰崎の反応を待った。ぱかりと開けられたクーラーボックスの中には、指導者陣がなけなしの身金を切り買った、人数分のアイスが入っている。それも、ただのアイスではない。すべからく庶民の憧れ、ハーゲンダッツだ。
発案者の烏養は、アイツらには俺らを敬う気持ちが足りねぇ!いっぺん分からせてやる!などと嘯いていたが、それが気恥ずかしさからきていることは武田や猫又などにはお見通しだった。だからこそ、この戯れのような差し入れに協力したのだ。烏養くんは甘々ですねぇ、なんて笑いながら。
「ハーゲンダッツ…」
「あ"、クーラーボックスごとつっても1人1個だからな!」
「私、スイカバーの気分です」
「な…ん………」
「は、灰崎さん!君は少し欲深ですね…!」
「スイカバーの方が安上がりかと…」
大人の気遣いを物の見事に無碍にする。事の顛末を伝え聞いた出資者たちは、厄介に思えた己の生徒たちがやけに可愛く見えるようになったのだった。
オールシーズン企画 ◇◆ 2017/04/17 03:44
どうにもこうにも、書きたいシーンがギチギチに固まっているせいで1度躓くとなかなか本編が進まない。人はそれをスランプと呼びます。
そんなわけでオールシーズン企画という名のリハビリで、短編以下なお話を思いついた時に投げ込むことにしました。
あまりに放置してるとね、良からぬ事に巻き込まれるんですよね、これ経験則です。
それはそうと、こんなところで申し訳ないのですが、コメントはすべて大事に読ませていただいております。
お返事ができず、すみません。
更新という形でお返ししていけたらと考えています。
今回の企画も正月の時同様、何かしらの単語と相手をこそっと言っていただくとそれを題材に書く、かもしれません。
お気軽に「烏野と灰崎姉と追いかけっこ」「京谷と灰崎姉と肉」「もしも灰崎姉と岩泉が従兄妹なら」のようにclapからどーぞ。
七草粥 ◇◆ 2017/01/07 14:33
「兄さんは彼女さんが七草粥作ってくれたんだって。賢太郎は七草粥食べた?」「キムチ入ってた」
「八草粥じゃない。ちなみに、うちは卵と鶏肉入ってた」
「養鶏場粥かよ」
「祥吾と同じこと言うのやめて」
成田はすれ違った ◇◆ 2017/01/04 13:25
おみくじに「勝負事、避けるが吉」と書いてあったのにジャンケンをし、物の見事に1人負けを喫した成田は焼きそばとイカ焼きの屋台を回ることになった。焼きそばはタイミング良く受け取れたが、イカ焼きはそれまで焼いていた分が全部買われてしまっていた。なんとも運が悪い。待つ間、ケータイを弄ろうにも年越しのあけおめメッセージのやり取りのせいで上手く繋がらない。手持ち無沙汰のまま、仕方なく辺りを見回す。何処かに見知った顔はないだろうか。
「ニーチャン、お金も無いのに頼んだってか?」
「札も金だろーが」
「屋台で万札出すなんて、物を知らないにも程があるぜ」
トラブルの予感しかしない。そろりと様子を窺うとフランクフルトの屋台のオヤジと睨み合う男がいた。高校生だろうか。目つきの悪さと、レゲエ歌手のような髪形が、近付き難さを跳ね上げている。田中や西谷のような熱血ゆえのガラの悪さとは違う。
関わるまいと、着々と火が通っていくイカに意識を移す。美味そうな匂いに思わず目を瞑り、すんすんと鼻を鳴らした。
「祥吾、どこでカツアゲしてきたの。返してきなさい」
もうすっかり聞き慣れた声に驚き、フゴッと豚のように鼻が鳴った。イカを焼くオヤジにゲラゲラ笑われ、もう少し待っていろと慰められている間に、その声の主は成田の背を左から右に横切った。
恐る恐る、目を向けてみる。そこには見知った顔が1つ。
「灰崎何やってんだよ…!」
「はいよ、イカ焼きお待ち!」
引ったくるように受け取り、踵を返す。これは俺の手には負えない。
月島は見た ◇◆ 2017/01/03 10:18
何で新年早々、この鬱陶しい面々と顔を合わせなければならないのか。月島は母親に無理矢理、被せられたネッグウォーマーに鼻先まで埋めて息をつく。そもそも初詣自体、山口に責付かれて松の内ギリギリに行くのが常だったのに。兄と山口、更には谷地が手を組み、人でごった返す神社に足を運ぶ羽目になった。今年の行く末はきっと禄なものではない。もうそろそろだと小銭を握り締める日向と谷地が羨ましい。前後左右の人垣しか見えない彼らは、自分たちが今、境内のどこに立っているか分からないのだろう。延々と連なる列は後方にばかり増え、前方のは一向に減っていないように見える。どんなに嫌でも、流れに身を任せる他ない。
「はぁ…」
「月島、ため息つきすぎだろ!神様に怒られるぞ!」
「…いいよねぇ、日向は。影山の背中と谷地さんの顔だけしか見えないんだから」
「バカにすんなよ!山口のアホ毛だって見えてる!」
「え、俺、日向からアホ毛しか見えないの?」
「山口うるさい」
「ごめんツッキー」
「あ」
「どうかした?影山くん」
「灰崎先輩がいる」
だからどうしたと思いつつ、影山の視線の先を追う。月島も山口も、すぐにその姿を捉えることができたが、描写するのを躊躇った。何故ならば。
「男に腕回されてる」
正しくその通り。日向と谷地のダブルサウンドの驚愕の声は、月島の耳を鋭く突いた。その不快さによる血迷った思考だろう。今すぐ人を掻き分けてその腕を払いたい、なんて。
横から山口の視線を感じる。しかし、目を合わす気にはなれなかった。
「はぁ…」
また1つ、ため息がネッグウォーマーに消えていった。
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