俺は馬孟起


某月某日。
今日も今日とて上官の暑苦しい声で目を覚ます。あの方の朝は早い。

「起きろいちこ!今日は快晴だ、朝駆けに行くぞ!」

「分かりましたから開けないで下さい!」

「すまんな!厩で待っているぞ!」

副官だからとは言え、未婚の女が寝ている部屋の戸を断りもなしに開ける男をこの方以外にそう簡単に見つけられるだろうか。無理な気がする。
一応謝罪は口にするのだけど、多分あまり気にかけていない。何しろこういうことはしょっちゅうだからだ。

「お待たせしました」

「見ろ、朝日だ!今朝はあの日を目指して駆けるぞ!」

「今朝は、というか大体いつもですよね…」

「行くぞ!」

「はい」

聞いているのか聞いてないのか、きっと後者でしょうが、私の突っ込みには気にも留めずさっさと馬を走らせてしまった。その後を私も追いかける。
脇目も振らず全力で馬を駆る馬超様。きっと私が女だということは綺麗さっぱり頭にないに違いない。馬超様のせいでこんなに逞しくなったのに、この方はそれに慣れてしまったのだ。だから私室も平然と開ける。

「お前もすっかり人馬一体を習得したな!共に駆ける楽しさは馬岱に次ぐぞ!」

「ありがとうございます」

「さあ戻るぞ!」

心の中でぶつぶつと不満を漏らしつつも、なんだかんだ褒められると嬉しいのである。真っ直ぐさに振り回されてばかりだけど、離れられない理由がそれなりにあるのだ。



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