涼州の武人
某月某日。
今日はお前を鍛えてやろう、と処理中の執務も中途半端のまま外に引っ張り出された。落ち着きのない馬超様の代筆をしている書簡の一つや二つがあるというのにこの仕打ちか、と一人ごちて渋々槍を持つ。
「さあ、どこからでもかかって来い!」
「それでは参ります」
私もこの方と同じ槍を使うものの、当然ながら力の差は比べるまでもない。当然だ、女なんだもの。
それでも五虎将軍の一人を支える立場にまで登れたのは私の誇りだ。そう考えるとやはり女を捨てても構わないかと思ってしまう。
なら勝手に部屋の戸を開けられるくらいで声を荒げちゃならないか。
「甘いぞ!お前ならもっと出来るはずだ!」
暑苦しい、実に暑苦しい。激励の仕方は上手いが暑苦しい。
頭の中ではそう呟けるも、馬超様の今の発言に返事が出来るほど余裕はない。自分が全力でぶつかれる相手はなんだかんだこの方なのだ。奥歯を食いしばって思い切り武器を振り回す。
「お前が戦場で他の者に遅れを取らずに済むまで!俺はお前を諦めないぞ!」
一瞬体が強張る。軌道が外れて土を裂いてしまった。
男だらけの戦場にぽつりと女。実力でのし上がって来ても、やはりどこかで劣る。力の面、体力の面。
私を女として見てないと感じつつも、どこかでこの方は私を気にかけているのだと思う瞬間がある。今が、それだった。
「良いぞ、その調子だ!」
「はいっ、!」
振り絞って出た声は加減が利かず馬超様に劣らない大声だった。しかしそれを聞いて馬超様は暑苦しく笑う。
「お前の武は俺を燃え上がらせるな!」
そう言われて嬉しくなったりこちらも燃え上がったりするのは、この方の褒め方が上手いのか、私が単純なのか、それとも。
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: 90+1
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