花子


5キヨ





おはよう、そう言った声は震えていたと思う。これが、初めての、#name2##name1#としての声だった。

ヒラ、だ、と思った。俺の感想。でも違った。#name2#に向けられたおはようはおれたちに向けるような雑なおはようなんかじゃなくて、丁寧な大切にしてる感じのおはよう。ヒラは隣の席に座った。おっけおっけ、ここまでは#name2#に聞いてた通りだ。あとはヒラと会話をしてれば先生がきて、それで終わる。おれは時計をちらりと見た。目を疑った。ホームルームまで後30分はあるぞ?!は?!30分間ヒラと喋んの?!そりゃあ、キヨとしてだったら全然100時間余裕だけど、今のおれは#name2#だし、それとこれでは全く話が違う。

「#name2#さん?」

どうしよう、どうしたらいい?最悪トイレに30分間逃げ込むか。#name2#への最悪なレッテルが貼られるとしてもおれの気持ちが楽ならそれでいい。というかこれからトイレに引きこもるレッテルが定着するであろうし…。

「#name2#さん!」
「あ"!?」
「えっ!?」

急に大きい声で呼ばれたもんだから、普通に驚いてしまった。それは教室にいた生徒の視線を集めてしまうには容易な行為だった。まだ数は少ないとはいえ、少し教室がざわつく。どうしたの?と声をかけてくる女生徒は#name2#の友達であろうか、それに適当に返事を返すとおれは、#name2#を呼んだヒラの方へと向いた。

「#name2#さん?大丈夫?」
「えっ、あー、うん!大丈夫!平気平気」
「ほんと?本逆さまだけど…」
「えっ?!?あ?マジだ。あはは流行り流行り」
「本当に大丈夫?具合悪い?」

ヒラってこんな優しいやつだったっけ、と考えてやめた。そうだ、ヒラは、#name2#のこと好きなんだっけ。でもそれを、おれが、どうしたらいい。ヒラはおれの考えなんか知るわけないから、いつもの#name2#と話をするように会話を振ってきた。それどこまで読んだの?だとか、昨日もまた遅くまでゲームしちゃってとか、終いにはおれの名前が出てくるわで、#name2#はいつもヒラとなんの話をしてるんだよ。おれは必死に#name2#の顔で笑って返事をしてる。けど、もう限界。

「ごめん」
「えっ、#name2#さん!?」

すっぽりとはまってしまった上履きで走るのが酷く辛くて、背丈の変わった体で走るのは気持ちとは裏原に酷く軽かった。

20160504

- 10 -

*前次#


ページ: