[chapter: 奈落の虫は天(そら)を見上げ、
その青さを知る]
昏い腹の中で、俺は青空を見た。
世界を飲み込もうとする奈落の虫、即ち俺を睨むように見る君。その青い瞳に強い意志を宿し、鋭く俺を見る君。
世界を滅ぼそうとする俺と世界を救おうとする君がこうなるのは必然であり、当然だった。
強い敵対心を抱き、睨むように鋭く俺を見る君の青い瞳は皮肉にも一等美しかった。まるで空のように深い青は一層深く濃く見える。強い意志という煌めきは夜空で輝く星のようだ。
思わず手を伸ばしそうになる程に焦がれた。焦がれてしまった。俺とは違う深く美しい青の瞳に軽く嫉妬すらしたものだ。
そんな自分を心の中で叱責して止めると俺はアルトリア達と共に戦う君に襲いかかった。
「アルビオンだ!どうしてかわかんないけど、アルビオンが『奈落の虫』を攻撃したんだ!!」
アルトリア達に負けて奈落の底に落ちていく中、外から攻撃されて奈落の虫の体に穴が開く。その間に君は開いた穴から空を目指す。
空を見上げて希望に輝く君の瞳は、まるで晴れた空のように澄み渡る青さを讃えていた。
今まで俺に向けられていた強い意志を宿す瞳は、星々が煌めく夜空のような深い青だったが、希望を持って空を見上げる君の瞳は澄み渡る快晴の空のように爽やかで美しい青だった。
空を目指し、青を瞳に宿す君は上に向かう。そんな君に思わず節だらけの手が伸びた。それに気づき、慌てて君に伸ばす手をもう片方の手で叩き落とす。
駄目だ、駄目だ、駄目だ!
こんな奈落の虫があんなに綺麗な青空を奪って良い訳がない!
ただただ世界を腹の中に納めようとする卑しい虫なんかが、あんなにも美しい青空を貪って腹の中に納めて良い筈がない!
飲み込む時も貪るのは汚い大地だけ。美しい青空には手を出してはいけない。
だから。
「行け行け、どこへなりとも飛んでいけ!もう会わなくていいと思うと清々する!!」
俺なんかに捕まる前に。俺なんかに捕らわれる前に。
逃げろ。逃げてくれ。
俺の美しい青空。星を宿す青い宙。
俺はここから君を見上げて、焦がれるくらいが丁度良いだろうから。
「ふん、あれが汎人類史の空か…まったく。吐き気がするほど、キレイじゃないかー」
青空の欠片は上へ上へと行く。まるで、沢山の欠片達がいる大空に向かうように。
在るべき場所に帰るように。
「さようなら、俺の星。輝く星なんかではなく、その青の宙に星達を抱いて歩む君」
俺はここから宙を見上げ、君を思おう。
奈落の空に落ちながら、俺は去り行く青空の君に向かって、そう誓った。
[newpage]
奈落の虫は落ちながら、上を見る。
暗い奈落の底から、遥か頭上にある青空を見る。
周りは全て昏い体の中から、青く広がる空を見上げる。
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奈落の虫は世界という大海を知らず
故に見上げる宙の青さを誰よりも知る
愛しい人の瞳のような青空を見て
奈落の虫は底に落ちながら
彼の美しい人を思う
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