ぴよぴよ亭ファイナルッ!


暗愚の王の復讐


暗愚の王の復讐
〜ふかふかのコギ犬を使って〜



余は暗愚とはいえ、王である。そして、復讐者のサーヴァントである。
なので、暫く僕を放ったらかしにしていたマスターに復讐をする事にした。復讐者なので。
ここの所、マスターは大量の仕事を終わらせるべく、マイルームに閉じこもっていた。
曰く「夏休み入る前に仕事を終わらせないと、夏季休暇は無しですって言われちゃった。だから、頑張って終わらせないと」との事。夏休みの宿題を夏休み最終日にやるみたいな理由だ。子供か?いや、子供だったか。成人していないらしいし。
そんな訳で無事に夏季休暇を全力でエンジョイする為に溜まりに溜まっていた仕事を片付けているらしい。余程仕事を溜め込んでいたらしく、ここ数日、食堂以外でその姿を見ていない。そして、サボらないようにする為に自室に入れる人達も限定しているらしい。
俺が来た頃はしょっちゅう部屋に誘ってくれて雑談したり遊んだりしてくれていたのに、ここ数日、僕は彼とまともに会う事すら出来ていないんだ。
この間、食堂で姿を見た時なんか、疲れ切った顔をしながら食事をしていた。死んだ目で黙々と食べていく姿は普段の快活な彼からは想像できない程だ。
全く、人類最後のマスターが何て様だ。時間があるからと怠けて遊び過ぎるから、仕事が溜まるんだ。溜まりに溜まった結果、何日も仕事漬けになって、どうする?
カルデアもカルデアだ。いい年した大人が複数人いるというのに、年若いマスターのスケジュール管理も出来ないとは。マスターを頼るしか他に手が無いとは言え、もう少し、マスターが余裕を持って日々を過ごせるようにしろよ。
本来、マスターは自由を謳歌出来る学生なんだぞ?周りの大人が上手くするべきだろうが。カルデアは所長を始め、優秀な奴が多いのに。
そして、余は思った。今こそ、世の大望を阻んだ人類最後のマスターに復讐をするべきだ。良い機会だから、これでもかと嫌がらせをしてやる、と。
ふふふ、とほくそ笑みながら復讐に使うものを抱えると、余はマスターの部屋に向かった。
「入るぞ、マスター」
「まーたジョン君が勝手に人の部屋に入って来てる」
「断りは入れたぞ」
「君が入り口で言っただけで、俺は許可を出してないんだよなぁ」
自動扉が開くと同時に入るとマスターの藤丸がレポートをしながら、声をかけてきた。それに僕が返すと、マスターは楽しそうに笑い声をあげながら、応えてくれる。余程仕事が忙しいらしく、こちらを見ないまま。
出会いが出会いだったからか、僕達の関係は最初はぎこちなかった。けれど、マスターが上手く気を使って交流を重ねたお陰で僕達はそれなりに打ち解け、こんな軽口を叩き合えるようになった。マスターのジョン君呼びも早く打ち解けられるようにと君付けで僕を呼ぶようになったのである。
因みに他は黒獅子さんとかジョン王とか呼ぶ。そこら辺の配慮含め、僕は本当にマスターに感謝している。
だからこそ、僕はマスターの放ったらかしが我慢出来なかった。
「仕事を頑張るマスターに差し入れを持ってきた。受け取ってくれ」
「ジョン君の差し入れ?一体、何を…」
俺の言葉が余程気になったのか、マスターが体ごとこちらをふり向いた。その瞬間、僕が抱えて持ってきたものが分かったらしく、固まってしまう。
「じょ、ジョン君!それは…!!」
「以前、マスターが大好きだと言っていたから、激励する為にも持ってきた」
「いや、確かに好きだけど!でも、今は仕事が…!!」
動揺するマスターにそう言うと、彼は狼狽えながら呟いた。その言葉を聞き流しながら、僕はマスターに近付いていく。差し入れをしっかりと持ったまま。すると、マスターははわわ…!とか慌てふためきながら、僕から離れるように後退していく。
予想していたとはいえ、少し悲しい。しかし、これは復讐なのでマスターが嫌がるのは想定済み。復讐すると決めてやっている事なので、そう簡単にやめてはいけないのだ。
「暗愚の王とはいえ、王からの施しだ。有難く受け取れ」
「有難いっちゃ、有難いけど、ちょっと今は…!」
「煩いぞ、マスター」
じりじりとマスターに近づきながら言うと、マスターもじりじりと下がる。遂には下がり過ぎて壁にぶつかったマスターに、にやりと笑うと、
「さもなくば、こうだ」
「あぁ…っ♡」
手に持っていたものをマスターの顔に押し付けた。すると、マスターは恍惚の声をあげながら、それを受ける。顔に押し付けたから、表情は分からないが、多分顔も恍惚の表情を受けているだろう。
そのせいか、荒い呼吸音が聞こえる。すーはー、すーはーと。僕の持ってきた差し入れを吸って堪能しているらしい。
狙い通りである。あまりにも上手くいき過ぎて、思わず笑みが溢れてしまった。
その間、マスターはしっかりと差し入れを抱えるとすーはー、すーはー、差し入れのブツを堪能する。
「はわぁ…っ♡ジョン君のコギ犬のもふもふ♡プリチーなおちり…♡猫吸いならぬ、犬吸い…♡しっかり手入れされているからか、凄く良い匂いがするぅ…♡」
「嬉しいだろう、マスター?何せ、マスターが大好きな余のコーギー犬のもふもふなのだからな」
「くっ…!卑怯な…!!」
ハートマークを飛ばしながら呟くマスター。そんなマスターを見て、ハッと笑いながら余が言うと、マスターは俺が押し付けた差し入れ…余のコーギー犬をまじまじと見ながら言う。
「しかも、中々もふらせてくれない、コペパンコギ犬の方とは…!やるな、ジョン君…!!」
「満足したか?したなら、いい加減休め」
余の差し入れがいたく気に入ったのか、軽く感動すらしながら礼を言うマスター。そんなマスターに本来の目的である復讐をするべく、そう言うと、
「いや、まだ仕事が終わってないから、休めないんだけど…」
とか言って、そそくさと差し入れのコーギー犬を抱えながら戻ろうとするマスター。もふもふ、もふもふとか呟きながら、さりげなく余のコーギー犬を持って仕事に戻ろうとするマスターの首根っこをむんずと捕まえる。
「駄目だ、マスター。余の差し入れを受け取ったのだから、僕の言う事を聞け」
「あぁー!お客様、困りますぅー!乱暴は困りますぅー!!」
そう言いながら、強引に歩き出すと、マスターは元気よく叫んだ。叫ぶ元気があるのは良い事だが、抵抗はしない。僕は非力だからか、力勝負ではあまり差はないというのに。
余程、疲れているようだ、
目的地まで引き摺るように連れていくと、余はベッドにマスターを投げ飛ばした。ベッドで転がるマスターに僕もベッドに近づく。
「さぁ、寝ろ。このまま余が添い寝してやる。有難く思え」
「いや、本当に有難いけど、仕事は終わってなくて…」
「まだ言うか。なら、こうだ」
「あぁ…っ♡」
僕がベッド脇にまで来ても、マスターはまだ抵抗するので奥の手を使用した。すると、マスターはまた甲高い喘ぎ声を上げる。
「はわぁ…♡プリチー♡黒コギ犬君のもふもふ♡もちもち♡なお尻がいい感じに目だけを覆って…♡ホットアイマスク的な癒しがすごぉい…♡」
「そのまま寝ろ、マスター。連日休みなく仕事をしたから、疲れただろう?後は僕が何とかしておくから、そのまま寝ろ」
黒のコーギー犬のお尻を目だけに当てるように押しつけると、漸くマスターは抵抗をやめた。ふにゃふにゃになりながら呟くマスターにそう言うと、暫く躊躇した後、マスターはぽつりと言う。
「…そこまで言うなら、休ませて貰うね」
暖かな犬の体温が気持ち良いのか、それとも膨大な仕事をやって疲れたからか、力の入ってない声で言ってくる。
「ありがとう、ジョン君…仕事が終わったら、遊ぼうね…」
「当たり前だ。その為に余は来たのだから。暗愚とはいえ、余は王。マスターとの約束なら、守るさ」
余の言葉を聞いて安心したのか、軽く頷いたマスターは、そのまま眠りに落ちた。聞こえてくる規則正しい寝息から、悪い夢は見ていないらしい。それにホッと安堵の息を吐くと、僕は犬を持ち上げた。穏やかに眠るマスターの寝顔を見て、心の中で呟く。
お休み、マスター。良い夢を。今くらいは、ゆっくり休んでくれ。
そう思いながら、何度もその幼さの残る寝顔を撫でた。

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