ぴよぴよ亭ファイナルッ!


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[chapter:一つを二つにして君と食べる]





「あ、あの有名メーカーの大福のアイスだ」
それを食堂で見たマスターは思わず呟いた。共同の冷蔵庫の冷凍室にあった、それ。それを見つけたマスターは早速手に取る。
「エミヤ達に許可を取って、彼と一緒に食べようっと」
喜んでくれると良いな〜と思いながら、マスターは走り出した。
「という訳で、俺と一緒に大福のチョコアイスを食べて欲しいんだ、藤堂君」
「何故、僕?」
「これを見た瞬間、君の顔が浮かんだから」
チョコの大福アイスを差し出しながら、ますたーが言うと藤堂は困惑しながら疑問を口にする。そんな藤堂にマスターは笑顔で答えた。
期間限定のお高いチョコを使った、超美味しいチョコアイスなんだ!と力説するマスターに藤堂は若干気圧されながら、分かったと頷いて了承する。それにマスターは更に笑みを深めると、アイスを覆う蓋をぺりぺりと剥がした。
現れたのは黒に近い茶色の大福が二つ。思ったよりも大きなそれに藤堂は目を見開く。マスターはアイスと一緒に持ってきたフォークで一つを刺すと、はい、どうぞ、と藤堂に差し出した。藤堂は躊躇いながらも、それを受け取る。
それを見たマスターも残りの一つにフォークを刺して取り出した。
「あの有名メーカーの大福のアイス、やっぱり美味しい!」
ぱくりと一口食べたマスターは嬉しそうに叫んだ。もちもちの求肥とアイスは程良い甘さのチョコの味がする。チョコの味は濃いが、後味はあっさりとしている為、もっと食べたくなる。
そんなマスターを見ながら、藤堂もフォークに刺された大福に齧り付いた。そして、驚いた。
本物の大福のように餅が周りを包んでいる。中身は餡子ではなく、チョコアイスだから、驚きだ。それも立香が言うように高級なチョコの味がする…気がする。
口一杯に牛乳と卵と砂糖、そしてチョコの甘さが広がる。お餅の方からもチョコの味がするから、藤堂は不思議で仕方ない。
あぁでも、何故だろう?少しだけ苦さを感じる。マスターと食べているからだろうか?密かに片思いをしているマスターと食べているからだろうか?
齧り付いたからか、とろりと溶けていくお餅の中のチョコアイス。それを一雫だって残したくない藤堂は少し慌てながら、食べていった。一口ずつ齧り付いては口を動かして咀嚼し、チョコの大福アイスを堪能する。
生前の藤堂はこんな美味しいものを食べたことがなかったから、初めてチョコアイスを食べた時は今はこんな美味しいものがあるのか、しかも手軽に食べられるのか!と驚いたものである。
その中でも、この大福のチョコアイスは格別だ。もちもちとしたお餅と甘いチョコアイスは何とも言えない程に甘くて優しくて美味しい。
それを自分と一緒に食べてくれる人がいるから、尚更美味しい。
あまりの美味しさに藤堂は泣きそうになってしまった。それを誤魔化すように慌てて餅とチョコアイスを飲み込んで、マスターを見ながら口を開く。
「これ、美味しいな…アイスは勿論、アイスを包むお餅も良い…」
「藤堂君も気に入ってくれたようで、何よりだよ」
ぽつりと呟く藤堂にマスターは満足そうに笑う。花が綻ぶように優しく、それでいて可愛らしい笑顔。その青い瞳は慈愛に満ちている。
自分とは違う青い瞳。アヴェンジャークラスだからか、それとも成り立ちが成り立ちだからか、全体的には青だが、瞳孔は赤い自分。それとは違う、マスターの深くて美しく、そして自分を包み込むような優しい青い瞳。
自分とは違い、ただただ美しくて優しいマスターの青い瞳に藤堂は目が釘付けになった。
そんな自分に気付いた藤堂はわざと大袈裟に顔を逸らし、目線を逸らす。何故なら、じっと人の顔を見るのは失礼だと思うから。
藤堂はマスターが嫌がる事なんて、したくないのだ。話題を変える為にも疑問に思った事を口に出す。
「でも、どうして半分にして、僕に一つくれたんだ?別々にすれば、マスターは二つとも食べられたのに」
「君と二つにしたのを食べたかったんだ」
藤堂の問いにマスターはそう答える。その言葉に藤堂は再びマスターの方を向いた。
マスターは悪戯が成功した子供のように笑っていた。深く美しく、優しい青の瞳に幼い子供のような煌めきが宿る。
「こういうのは好きな人と一緒に分け合って食べるのが一番美味しいからね」
笑いながら言ったマスターの言葉に、藤堂は目を見開いて藤丸を見た。彼は藤堂に向き合い、優しく穏やかに、そして楽しそうに微笑んでいる。
そんな彼の笑顔が眩しくて。嬉しくて。藤堂の顔も綻んだ。
「そうだな、マスター…これは、とても美味しいな…君と食べるアイスは…一等、美味しいよ…」
「でしょ?」
噛み締めるように言った藤堂の言葉にマスターはにこりと笑いながら、そんなマスターに藤堂は胸が満たされるのを感じながら、大福アイスを食べたのだった。
以来、藤堂はこのアイスを食べる時はマスターと一緒に食べている。マスターが誘う時もあるし、藤堂が声をかける時もある。他のは兎も角、このアイスだけは藤堂はマスターと食べるようにした。
ただ、それでもどうしてもマスターの都合がつかなくて、一度だけ、藤堂は一人でこのアイスを食べたことがある。
「これでも、美味しい事は美味しいが…」
一つの中に入っている二つの大福のアイスを一人で食べながら、藤堂は呟く。
「マスターの言う通り、好きな人と一緒に分け合って食べるのが、一番美味しいな…」
ぽつりと言うと、藤堂は口の中のチョコアイスとお餅を飲み込んだ。そして、二度とこのアイスだけは一人で食べないと決めたのだった。
以来、藤堂が一人でこのアイスを食べる事は無い。

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