本田達3人は、目的の塔が出で並ぶ城壁の屋根沿いを伝い登って、塔の下まで登りつめていた。そこへ本田が綱を投げ込み、幾分引いて安全を確かめる。

「よし!杏子、お前から先に登れ。そうすれば途中でもし落ちそうになってもフォローできるからな。」
「えぇ?!嫌よ!!!」

 しかし杏子は断固として嫌がった。

「「なんで?」」

 素っ頓狂な返しをする2人に、杏子はスカートの裾を抑えて顔を赤くしながら怒る。
「も〜〜! わかんないの?!」

「あ…」
「え?なになに?」
 それでも何がも理解できない本田に対し、獏良はすぐに察して本田に耳打ちをした。

 だがそれも虚しく本田は断固として譲らなかった。
「いいやダメだ。もし下で落ちたら助けられないから、絶対ダメ!」
「じゃあどうすんのよ!」

 ***

 囚われた3人の苦しそうな声がそれぞれに助けを求め響く中で、遊戯はどうする事もできずにいる。
「じぃちゃん!海馬くん!モクバくん!」

 《遊戯、…あのペガサスという男、お前の考えている以上に、…恐ろしい男じゃ。》
「じぃちゃん…それどういうこと?」

 《あの男の心は、闇の虜となっているのじゃ。暗く深い、闇の世界の虜に…》

 遊戯の目の端が動く。
「闇の世界…?」
 なまえの言葉が脳裏に蘇り、遊戯はハッとする。

『───私の知る、カードゲームを生み出し、自ら手掛けたモンスターを愛し、そして様々な遊びに好奇心を見せた、純粋なペガサスは、…変わってしまった。』

 《あの男の心は、闇の虜となっているのじゃ。暗く深い、闇の世界の虜に…。》
「…闇の世界?」
 《あの男は暗い闇の力を糧に、生きておるような気がする。オマエはこれから、その巨大な闇と戦わなければならなんのじゃ。…そしてその闇の力は───》

 突如として三人の魂のカードが貼り付けられた十字架の足元に、青い炎が燻る。
 《いつでもワシらの命を、奪う事ができるのじゃ!》
「あぁ!じいちゃん…!!!」
 青い炎は双六の言葉をそのまま表したように燃え盛り、三人を包んで苦しめる。遊戯が慄くが、引き下がる事もしないで三人の魂のカードを見上げた。

 《遊戯…遊戯───!!!》


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