晩餐を終えて、遊戯達はそれぞれの部屋に入った。陽も落ち、海に囲まれた城は一斉に暗くなり、月が異常に明るく感じるほどにその城壁を照らしている。

 杏子の部屋には、本田と、本田に連れられた獏良の2人が押し掛けていた。そしてペガサスのイカサマを疑った本田は、2人に協力を求めてデュエルリングへ向かった。


 その頃遊戯は、既に部屋の明かりも落としてベッドへ入っていた。しかし寝付けず、寝返りを打ってはソワソワとしている。

 《──遊戯… 遊戯》

 飛び起きて部屋を見渡す。
「まさか…!じぃちゃんの声?!」

 《遊戯、…ワシはここじゃ…》
 遊戯は掛け物を剥いでベッドから足を下ろす。
「じぃちゃん!どこなの?!」
 《遊戯…助けてくれ……!》

 ***

 デュエルリングでは本田、杏子、獏良がコソコソと何か不審なものが無いか探していた。

「何もないわよ!もしかしたら、ペガサスは実力で海馬君を…」
 杏子が階下のデュエルリングを探ぐる本田に言うが、本田は目も向けずに暗い中を手探りにも調べる。

「オレにはそうは思えねぇ…。オレなら絶対落とせない試験の時は、必ずカンニングするからな!」
「あのねぇ…」

 杏子は予想外の動機に呆れすら覚える。だがその時 雲間から月が出たのか、海馬の立っていた側のデスクを調べる本田の背中へ、一筋の光が差し込むのを見た。

「あれ?」

 ***

「じぃちゃん!」

 遊戯は部屋を飛び出して、双六の声に招かれるまま裸足なのも忘れてその廊下を彷徨った。
 《遊戯…こっちじゃ…苦しい… はやく、はやく助けてくれ…》
「じぃちゃん…!!!」

 ***

 デュエルデスクのある広間に、覗き穴になりそうな小さな穴を見つけた3人は、その穴から覗いた先にある塔の上に登ろうと決めて進んでいた。

 本田は丁度よく縄を見つけ、それを拝借する。
「お!いいもん見つけたぜ。」

 獏良が不安そうな目でそれを追う。
「ま、まさか…」
「いいからいいから。オレに任せとけって。」

 ***

「じぃちゃーーーん!どこなの?!返事して!」

 遊戯はいつの間にか、果たして城の外だろうかもわからない異様な空気に包まれた中に彷徨い出ていた。
 だがそれでも祖父 双六の心配さで、何の躊躇もなく飛び出す。
 《遊戯、…ワシはここじゃ》

 遊戯はぐるりと見渡す中に、地面に落ちた双六の“魂の牢獄”カードを見つけて駆け寄った。
 《遊戯、会いたかったよ…。苦しい…はやく此処から出してくれ…》
 しかし遊戯は膝をついてそのカードを眺めるだけで、何の手出しをする事も叶わない。

「じぃちゃん…!」

 遊戯は双六のカードを拾い上げる。
「じぃちゃん、ここからどうやって助けたらいいのか…僕には分からないよ。」

 《助けてくれ…苦しいんじゃ…》
 双六の魂もうわ言のようにそう呟くだけであった。
「く…いったいどうしたら…」
 しかし突然、遊戯の手からカードが飛び去る。
「あ…あぁ!」

 カードを目で追うしかできない遊戯は、その先に並ぶ三体の白い十字架の内の、真ん中の十字架へ双六のカードが張り付けられるのを見た。
「じぃちゃん!!!」
 遊戯は急いでその三体の十字架へ駆け寄る。

 そこには海馬のカードとモクバのカードも居並んでいた。
「海馬くん…それにモクバくんも!」

 《…ここから出してくれ…》
 《助けて!遊戯…!》
 それぞれの苦しそうな重い声が響く。


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