「ハーピィズ・ペット・ドラゴンは、場のハーピィ一体につき攻撃力が300ポイントアップ!」
 (ハーピィズ・ペット・ドラゴン 攻/2300)

「さぁ!デーモンを蹴散らすのよ!
 セイント・ファイヤー・ギガ!」

 舞の快進撃は続き、既に攻撃力を半減されていたデーモンは呆気なく破壊される。
「デーモンまでもが!」

 遊戯のフィールドは裏守備

「遊戯!今のアナタは大切な事を見失っているわ。その答えが見つからない限り、アナタは私に到底勝てないわ。」
「なんだと!」
 舞は腕を組み直して遊戯に真っ直ぐな瞳を向けた。その瞼に城之内を描いて…

「私が以前 城之内と闘った時、問われた言葉がある。…遊戯、今度は私からアナタにその質問をさせて貰うわ。」

 ───見えるけど、見えないもの。

「(城之内…私はその答えを、アナタに教えられたのよ。アナタにはその答えがわかっているはず。カードに関してド素人だったアナタが、なぜデュエリストキングダムの闘いを勝ち抜いて来られたのか…そこに答えはある! でも、今の遊戯には絶対にその答えを見つけられないわ。)」

 ***

「(見えるけど、見えない…)」
 なまえはチラリとペガサスを見た。舞の問いに、全てを見透かすミレニアム・アイが引っ掛かったのだ。だが千年アイテムを知らない舞に、それがすぐ自分の思い過ごしだとため息を吐く。
 …少し過敏になっている。そう思うと、視線を遊戯に落とした。

「場にカードを一枚伏せ、そして」
 タイミングよく、遊戯がなまえを見上げた。
「…!」
 目が合うとは思わなかったので、ドキリとしたそのまま遊戯と視線を交わして固まってしまう。
「(なまえ…!)」
「遊戯…?」
 なまえはあの目を知っている。だがそれは、海馬と同じものだった。
「(…海馬と、同じ?)」

「ブラックマジシャンを、守備表示で召喚!」
 なまえの胸に衝撃があった。遊戯のブラックマジシャンを見るのは、遊戯と海馬とのデュエルで遠目に見た以来だ。そして、自然と唇に手が伸びる。それでも脳裏に蘇るのは、自身に宿る方のブラックマジシャンだ。遊戯の持つ彼ではない──、しかし魂の方の彼にも、まだ未練がましく心臓はほんの少しだけ震えてしまった。

「(さぁ舞!ブラックマジシャンに攻撃を仕掛けたら、“聖なるバリア ミラー・フォース”がお前のモンスターを全滅させるぜ!)」

「(…見え見えだわ。攻撃力の方が高いエースモンスターを守備で出した上に伏せカード、舞さんが対策を取らない訳がない。)」
 心で思っていても、やはり口からは本心がこぼれ落ちた。
「遊戯…ブラックマジシャンを粗末に扱ったら容赦しないわよ。」
 自然と目が細められて釣り上がる。それを杏子の耳だけが拾って、なまえに振り返った。
 杏子と目があってハッとすると、口を押さえながら顔を逸らした。それに微笑みながら、杏子は遊戯に向き直った。
「(なまえ、本当にブラックマジシャンのカードの事が大好きなのね。)…頑張って、遊戯!」


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