「トーナメント1回戦、勝者は武藤遊戯。決勝戦に進出決定!」

 クロケッツの勝敗宣言に城之内を始め杏子や本田が湧き立つ。それに目をやる遊戯の人格は、既に暖かい、表の人格のものに代わっていた。
「(ありがとう、みんな!そして…もう一人のオレ)」
 遊戯の中の人格が確かにそう言ったのを、遊戯だけが聞いていた。いや、もしかしたら3人の友人たちにも、聞こえなくとも感じ取っていたかもしれない。それは彼らに共有された喜びがそう感じさせていた。


「コングラッチェレーション、遊戯ボーイ。」

 しかしその雰囲気もペガサスの一声で一変し、彼一人のクラップだけが響き渡る。
「素晴らしいデュエルでした。」

「あの野郎!」
 白々しいぜと続ける口を塞ぎもしない本田と同様、城之内も敵意を隠そうともしない目で声の主を睨みつけた。表の遊戯も眉間を寄せてペガサスを見上げ、彼の背後に囚われたままの魂を思って闘志を燃やす。
「(ペガサス!じいちゃんを取り戻すためにも、必ず決勝戦を勝ち上がり…お前を倒す!!!)」

 そんな彼らを、「言いたいことはわかっている」という目でペガサスは鼻で一つ笑った。事実、もう片方の目は見通しているのだ。
 なまえだけは、特に口を開くでもなく腕を組んだまま、黙ってペガサスを見ていた。それが哀れんでいる感情すら持っているという事も、ペガサスにしかわからない。


「続いてトーナメント二回戦を行う。キース・ハワード、城之内克也。両者リングへ。」

 ペガサスの横に控えていたクロケッツが一歩進んで宣言すると、城之内は手を握る。
「よし、オレの出番だぜ!」
 それがいつもより大人しめだと察した本田が城之内にちょっかいを出し始める。

「いいか城之内、落ち着けよ。こう…手のひらに“人”って字を三回書いてだなぁ」
「あぁ〜もぅゴチャゴチャ言うな! 余計緊張すんだろ?!」

 またワッと騒がしくなる四人を見て、なまえはそっとその場を後にした。
 それに獏良だけが気付きちらりと視線を向けるが、獏良はそれを表立って口にして3人に知らせたりはせず、黙ってその背中を見送る。


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