ローテーションで回る試合に目を向けながら、由貴はちらと兄を見た。いや、兄というよりも烏野を見た。素人の目からしても彼らがまったく噛み合っていないのが分かる。発展途上だから致し方ないことだと思うが、あまりのバラバラ具合に拍手を送りたくなる。
「烏野頑張ってるねー」
夜久の苦笑になんとも言えない。
「烏だけに雑食性だねえ」
「………一人を除いて、みたいですけどね」
ただ一人、長身の彼だけは涼し気な顔でバラバラのチーム内にぽつんと立っている。あの目立つ長身は月島だ。別に不真面目なわけではないが、決して本気にならないその様に由貴は若いな、とぼんやり思う。
「由貴チャン興味なさげなのかと思ったらそうでもないみたいだね」
「は?」
「烏野」
ふふふと笑う黒尾を一瞥し、由貴は彼らに目を向ける。
「ありませんよ、興味なんて」
「ふーん」
「…ただ、ああやって人の前で堂々と失敗できる時って子供の内だけだから、めいいっぱいやって損はないとは思ってますけど」
そう付け足せば、黒尾は珍しく心底驚いた顔をした。
「……………………由貴チャンってほんとに年下?」
「そうですね、高校一年生ですから」
「ほんとキミって恐ろしいわ……由貴チャンと話してたら、たまに大人と話してるみたいな錯覚するんだよな」
黒尾の返答に、まあ精神年齢はお前よりも上だからなという言葉を飲み込む。
「ほら、無駄口叩いている暇があるならちゃんと休憩してください」
「由貴チャンと話してる時間が俺にとって最高の休憩です」
「あ゛?」
「すみません調子に乗りました」
九十度綺麗に腰を曲げる黒尾の頭を鷲掴んでやりたかったが、流石に人の目を気にしてやめた。その代わり彼の特徴的な頭にボトルをどすんと置く。くぐもった声を上げてから黒尾は礼を言った。
「あの二人って結構仲良いよね」
「確かに……………」
弧爪と夜久を睨んでしまったのは、仕方がないことだと割り切ることにした。


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