「ちょっとブロック跳んでくんない?」

自主練習が開始された数十分後、黒尾は烏野の月島を誘った。何故彼を?と由貴は不思議に思ったが、黒尾の挑発によりあっさり参加した月島に強制的に思考をやめることになった。
「リエーフ、しんどくない?水分摂る?」
「ういっす…………」
ぶっ倒れているリエーフを介抱してから、由貴は赤葦にボールを出していた。間近でスパイクを見ると凄まじい威力に息を呑んでしまう。ブロックを担当する月島は、読みは良いものの木兎の火力に吹っ飛ばされていまいち防御力に欠けていた。とても勿体ないと、思う。木兎もそう思ったのかオブラートに包むことなく感想を直球に答えた。ぴしり、月島のこめかみに青筋が立つ。
「僕まだ若くて発展途上なんですよ。筋力と身長もまだまだこれからなんで」
「むっ!!」
「悠長な事言ってると“あのチビちゃん”に良いトコ全部持ってかれんじゃねーの。同じポジションだろー」
またもや黒尾の挑発。その瞬間、月島の空気が変わった。
由貴だけでなく黒尾たちも察し、口を噤む。
「それは仕方ないんじゃないですかねー。日向と僕とじゃ元の才能が違いますから」
月島の笑みと声は固かった。ああ、地雷踏んだなと悟る。しかしそこに「あっまたスパイク練習ですか?」と柔らかな声が体育館に響いた。凍った空気を割ったのは音駒のレギュラーメンバーだった。「俺ブロックやります!!」犬岡や夜久たちがわらわらと入ってくる。
「じゃあ僕お役ごめんぽいんで失礼しますね」
「あっおい!」
黒尾の制止を気にせず、月島はさっさと出て行ってしまった。
「…地雷踏みましたね、黒尾さん」
「大失敗じゃん。挑発上手の黒尾君」
木兎と一緒にジト目で彼を睨むと、黒尾はうっと言葉を詰まらせる。それから居心地悪そうに後頭部を掻くと「だって思わねえだろ」と言った。
「烏野のチビちゃんは確かに得体が知れないし脅威だけど技術も経験もヒヨコだろ。それにあの身長だし。それをあの身長も頭脳も持ち合わせてるメガネ君が、チビちゃんを対等どころか、敵わない存在として見てるなんてさ」
黒尾の発言に木兎も赤葦も黙る。夜久たちの話し声がやけに大きく聞こえた。
皆やっぱり若いなぁ、と由貴は目を細める。
「…ま、人がどう考えてるかなんて簡単に分かるもんじゃありませんからね。取り敢えず黒尾さんは明日謝っておいたほうが良いと思いますよ」
「分かりました由貴チャン先生」
「先生じゃありません」
一蹴すると黒尾はえー冷たいと肩を竦めた。
「ほんと由貴チャンって達観してるよなぁ」
面白そうに呟く彼に、由貴は何も反応しなかった。


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