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「“―――――――”」
最初に視界に入ったのは、古ぼけた茶色の天井だった。「ん?何か言ったか?」と訊く木葉にいいえと答え、赤葦京治は起き上がった。
随分長い夢を見ていた気がする。何だったのか、記憶を辿る。ひどく切なく、心を掻き乱されるような内容だった気がするが、曖昧すぎて分からなかった。ただ、何か言わなければいけなかった。口が勝手に開く。“あの言葉”を紡がなければ。
しかし、何を紡げばいいのか分からない。
「…え?赤葦お前………」
不意に木葉が驚きの声を上げた。
「な、泣いてんのか?」
「は……?」
木葉の発言に赤葦は指先を目尻に持ってゆく。触れてみれば、水滴が付着した。
「、あくびしただけですよ」
「あっ……そうか…そうだよな。なんだよもーびっくりさせやがって」
「びっくりしたのは俺のほうです」
咄嗟の嘘にあっさり引っかかってくれて助かる。先に部屋を出た木葉を見送り、赤葦も布団から出た。殆どの面々は既に食堂に集まっているようだ。早く行かなければ木兎辺りに遅いと叱られるだろう。
でも。のろのろと服を着替える中、赤葦の心は揺れていた。
「……………っ…」
どうしてこんなに涙が溢れるのだろう。何がこんなにも悲しいのだろう。夢の内容など何一つ覚えていないのに。悲しいことなんて何も記憶していない筈なのに。どうしてこんなに胸が潰される思いなのだろう。
考えても、記憶の糸を辿っても答えは出ない。やはり赤葦は何も覚えていなかった。


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