群青だって掴めないけれど
「…頑張れそうですか、赤葦さん」
(―――あ)この時、赤葦の視界は不思議と開けた。
「まだモヤモヤするなら私が適当に理由つけて皆さんに言っておきますんで、休んでみたら…」
「ううん、多分いける」
今、この瞬間、なんとなくだが分かった。由貴に諭され、励まされ、辿り着いた。痛いところを容赦なく衝いてきて、かつ優しく包んでくれる彼女に対して抱いている感情を。
由貴の滑らかな瞳はじっと赤葦を捉えている。――静かに、息を潜めて。それが堪らなく心地良く感じた。怜悧なそれは赤葦を落ち着かせ、次にやるべきことを指し示してくれていた。
「ありがとう」
色々、本当に。と心中で付け足す。先程と声音の違う礼に由貴は僅かに目を見開いたが、すぐに元に戻って「いえ」と謙虚に言った。遠慮しなくてもいいのにと思ったがそれを口に出すのはやめた。分かりにくいが、今の謙虚さは照れ隠しの為のそれだったからだ。
「じゃあ戻りますか」
「うん。あんまり遅いと木兎さんがうるさいしね」
おどけて言えば由貴は小さく笑った。
体育館に戻れば木兎や黒尾がニヤリと笑ってこちらを見てきたが無視した。今は彼らの視線など全く気にならないくらい、気持ちは晴れやかだった。
「また必要になったら言ってください、貸しますんで」
由貴に改めて礼を言って練習に戻る。「どうだったよ」と肘でつついてきた木兎を窘めて、赤葦はボールに触った。
ああ、頑張れそうだ。