由貴と顔を合わせる最後の一日となった。夕方、香ばしい肉の匂いが周囲に漂う。美味しそうなそれに木兎やリエーフなどがコンロを囲んでウロウロしている。もう少し静かに待てないのかと息をついて、赤葦は由貴を目で探した。長身な男たちが邪魔で中々見つからない。女子マネージャーたちのところを見てもやはり姿はなかった。まあ由貴は大勢でわいわい騒ぐタイプではないから予想できたが。
「影山さんなら僕さっき見ましたよ」
月島の言葉にぴくりと肩を揺らしてしまった。
「あっちの日陰で休んでました」
「………別に訊いてないけど」
「ありゃっ。それはスミマセン、余計なこと言っちゃいました」
ニヤ、意地悪そうな笑みを浮かべてわざとらしく詫びる月島をつい睨む。由貴を探していることが呆気なくばれてしまい、ちょっとだけ恥ずかしくなったがなんとか表に出さずに済んだ。
このまま来ないつもりだろうかと心配になったが、流石に食事の時間になれば戻ってくるだろうと考えて赤葦は由貴を気にしないことにした。
しかしそれは、杞憂として終わらなかった。
「そういや由貴いねーなー」
月島におかずをお裾分けし終えた木兎が何気なく言った一言に、赤葦は思わずまた周囲を見回した。木兎の言う通り、いない。
どこにいるのだろうか。今日は彼女を見かける回数が少なくてつい心配になる。最終日なのにこんなことではもう二度と会えないような気さえしてくる。まあ、己の気持ちを自覚したところでそれを伝えるなどおこがましいにも程がある。この気持ちは冷めるまで置いておいたほうが――――。
「赤葦」
唐突に呼ばれ、心臓が嫌に鳴った。いつもより真面目な声音の木兎に赤葦はひるむ。
「行けよ」
どこへ、を述べるのは愚行であるかのように、木兎は端的に言い放った。真顔の彼に赤葦は息を呑み、この人には敵わないなと半ば諦めた。不意に彼越しに黒尾を見つける。彼もまた、表情を消して静かにこちらを窺っていた。
本当にこの先輩たちは、良い意味で怖い。
「木兎さん」
「おー」
「ちょっと食いすぎて気持ち悪くなったんで、部屋に戻ってますね」
「おう。ゆっくりしてこい」
さっさと行けとばかりに背を叩かれ、赤葦は勢い余ってよろけた。だが今日ばかりはそれを咎めようとは思わなかった。


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