―――…し。
―――おい、

「あかあしッ!!!」
「!?」
野太い男の声に赤葦は飛び起きた。周囲を確認すれば木兎を初めとする梟谷メンバーが自分を囲んでいた。
「珍しいなーお前がこんなとこで寝るなんて」
「昨夜はあんまり眠れなかったのか?」
面白半分、心配半分で訊ねてくる彼らを適当にあしらいながら赤葦はトレイを片づける。まさか昼休憩に眠ってしまうとは不覚である。別に昨夜寝心地が悪かったわけではないのに。確かに珍しいことである。
「…何の夢見てたっけ」
思い出せそうで思い出せない。でも大切なことだったような気がする。思い出せないのにそんなことを思うのは変だが、早く思い出せと誰かに責め立てられているのだ。それが誰なのかすら分からないがとにかく赤葦は思考を巡らせた。断片的にふっと湧いて出るがその情報だけでは全貌が明らかにならない。
茶髪の、ゴーグルをかけた女が何か大事なことを言っている。聞き逃すわけにはいかない。いかないのに、水中にいるのかの如く音がぼんやりしていて聞き取れない。
「あ」
そこでふと、赤葦は唐突に思い出した。夢のことではない。荷物の中に入っているあるお菓子のことだ。賞味期限は大丈夫だっただろうかと心配になり、先輩たちを食堂に置いて部屋に戻る。この時間帯は誰も部屋にいなかった。
確認してみれば問題なかった。まあ食べるつもりなどなかったから、切れていたって然程問題はないが。―――だったら何故、唐突にこれのことが気になったのだろう?
「赤葦さん?」
不意に呼ばれたことに驚いて振り向けば、由貴がきょとんとして部屋を覗いていた。
「何してるんですか?」
戸、開けっ放しですよ。と言う彼女はドアを引いて閉めようとする。それは駄目だと思い、慌てて止めた。
「え?」
「あのさ」
自然と手が挙がる。口も勝手に動いた。「これあげる」先程、まだ食べられることを知って安心したお菓子。
「マドレーヌ、好きでしょ?」
そう言えば、由貴はひどく驚いた顔をした。


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