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・一巻最後の「ハッピーのちょっとお仕事」のお話。ハッピー視点。
・原作にて明記されてない部分は捏造&想像です。
・時系列は不明ですが、ナツとハッピーとはチーム結成済み。「エバルー屋敷編」よりは後。
・本編よりもだいぶノリが軽い。唐突に始まって唐突に終わる。



 オイラの名前はハッピー。青空のような毛並みと、ただの猫には真似できない翼の魔法が自慢のナツの相棒です。
 ある日、ギルドのリクエストボードを見ていたら、すんごい仕事を発見しちゃったんだ!!


──幻の珍味、羽魚を釣ってきてください。


 報酬は三万Jで、しかも一緒に食べさせてくれるらしい。そんな良いことだらけの仕事があるなんて、こんなの飛びつかないわけにはいかないじゃないか。オイラはただの猫じゃないけれど、ただの猫と同じように魚が大好物なのだ。
 んまー、んまーっ! と、興奮して手足をばたばたさせていると、たまたま近くにいた金髪の少女がぎょっと珍獣でも見るような顔をした。


「ルーシィ! ね、見て、魚! 絶対美味しいよ!」
「え? なに、魚? おいし……いやそれ、そもそも食べられるかな……」


 この子は最近ギルドに加わったルーシィだ。オイラとナツと同じチームでもある。初めて会った時から気遣いで溢れていた、ここのギルドではちょっと珍しい常識人です。そして、可愛いやら美人やらと密かに評価されていて、メンバーからの人気がやたら高い。その事実を知らないのはたった今、遠い目で引き気味の反応を示している当の本人だけだ。
 でも、結局のところルーシィは優しいから、そんな訝しげな顔をしていても頼めばきっとついて来てくれる。それに何より、オイラに甘い。

 小走りで駆け寄ってテーブルに飛び乗る。それから、ルーシィの手を「一緒に行こうよ」と引っ張ると、ほら。簡単に腰を上げてくれた。しょうがないなぁと言わんばかりに眉を下げた彼女に抱えられ、再びリクエストボードの前に立つ。
 ちょうどルーシィが依頼書を取ったタイミングで、遠くでグレイと言い争っていたナツが帰ってきた。


「お、次の仕事決まったのか? 魚か〜、うまそーだな!」
「だよね、ナツ!」
「う〜ん、どう見てもゲテモノ……」


 羽の生えた魚の絵をじっと見つめ、小さく呟いたルーシィをそのままに、オイラ達は嬉々としてマスターに報告に行ったのだった。


♦︎


 ところ変わって、羽魚が生息すると言われている山岳にて。

──早速、ルーシィが食べられていた。


「あいたたたた、ちょ、いたっ、なにこの魚! 肉食? 肉食なの?? 聞いてないんですけど……!」
「あい。さっすが、ルーシィだね」
「え、なにが? その『さすが』は一体どこにかかってるの? あいたっ!」


 空飛ぶ魚にもモテモテなんて、さすが過ぎる。いっそ羨ましいよ。
 髪を引っ張る羽魚と格闘しているルーシィを見上げながら、彼女の脚に食いついていた一匹を捕まえた。上の方はナツがはたき落としていたから、放っておいても大丈夫だろう。本来なら崖で釣り上げる予定だったのに、随分と楽ができてしまった。


「皮膚を噛みちぎるほど凶暴じゃねーから安心しろよ、ルーシィ」
「いや、仮にそうだったら今頃スプラッタだよ……」
「スプラッタぁ? なんだそれ、うめえのか?」
「……好きな人にとっては好物かもね」


 あ、今完全に誤魔化した。そう思いながらも、こんな二人の掛け合いが日常になりつつあることがなんだか嬉しかった。
 籠いっぱいに捕まえた羽魚を抱えながら、翼で飛んでわいのわいのと盛り上がるナツとルーシィへ突撃する。


「わっ、ハッピー?」
「どうした、って結構とれたな」
「あい! ルーシィのおかげでエサ要らずだったよ」
「うわあ、全然嬉しくない……」


 その後は、依頼主の元まで行ってあまりの仕事の早さに驚かれたり、豪勢な食卓に三人で目を輝かせたり……。ちょっとしたパーティーみたいに、みんなで楽しく過ごしました。
 え、肝心の羽魚の味はどうだったのかって?

 それはほら……。


「「「マッズぅ……っ!!!」」」


 見事に三人でハモるくらいには不味かったです、まる。
羽魚を捕まえろ