いち
今日は朝から最悪だった。テレビで流れてきたのは「おうし座のみなさん残念、12位です」というなんとも腹立たしいアナウンサーの高い声。だからなんだってんだと気にはしないが嫌でも耳に入ってくるアドバイスに苛立ちのバロメーターがぐんぐん上がるのが分かった。
「そんな12位のみなさんは、破天荒な上司に気をつけて!命の危機を感じる日です。何とか頑張って生き延びましょう〜それでは良い1日を!」
なんつーアドバイスだくだらねぇ。つか飯くらい静かに食わせろよ、と食堂のテレビの音量に八つ当たりしながら昼飯のカツに食らいつく。朝5時に総悟の仕掛けた爆音目覚まし時計で飛び起きたあの瞬間から俺の最悪は始まった。その仕掛けた本人は朝礼の時間になっても姿を見せずに解散した頃大あくびをかましながらやってきた。このクソガキを誰かぶん殴ってくれ。
そして近藤さんから急ですまないが、と前置きされとっつぁんがここに向かってると報告があった。こうやって突然とっつぁんが屯所に出向いてくる時は9割方悪い報せを持ってくる。深いため息を吐いてポケットのタバコを取り出した。
「はじめまして山田ハナコです」
客間に呼び出され向かえば、そこには女の姿があった。伸びた背筋に真っ直ぐ見据えた目が印象的で、何より真選組の制服がよく似合っていた。
「どーゆーことだとっつぁん。説明頼む」
「人手が足りねえとかなんとか言ってたから連れてきたんだけどよォ、どうよ?」
「どうよじゃねぇよ女じゃねぇか。こんな男所帯に…冗談はやめてくれ」
「脳筋のおめーらに出来ねぇ事務仕事とかあんだろォが、それを手伝ってくれるって言ってんだ。有り難く使ってやれ」
ってことで、と立ち上がりこの場から立ち去ろうとするとっつぁんを引き止めようと肩を掴むとカチャリ、と金属音が聞こえた。振り向いたとっつぁんの手には銃、その顔はまさに鬼。
「男がよォ、んなガタガタ言ってんじゃねぇよ黙って面倒見てやれよ約束しちまったんだよキャバクラで」
じゃあな近藤、よろしく頼むと何事もなかったかのように部屋を出たとっつぁんを呆然と見送ってハッとする。なんだキャバクラって?いやほんと冗談じゃない。
「お前、キャバクラから来たのか?」
「山田ハナコです、よろしくお願いします」
全く質問の答えになっていない山田と名乗る女の目は、それでも力強くこれ以上何を言っても無駄な気がして頭を抱えた。