に
「俺は認めてねぇ」
「トシ、ハナコちゃんにも色々事情があるんだろう。ここは一度受け入れて…」
「近藤さん、アンタがそんなだから漬け込まれるんだ。素性も知れねぇ奴をここに置くなんざ危険すぎるだろ、しっかりしてくれ」
「だけどなぁ、困ってるって言われちゃあ…剣術も護身術も習っていたらしいし」
「尚更危険じゃねぇか、殺ろされてーのか」
「ビビってんですかィ、土方さん」
ハッ、と鼻で笑うようにふっかけてきた総悟を睨めばやれやれと両手を広げて首を振る。クソガキなめやがって。てめーはただ面白がってるだけだろーが。
普通に考えて正体のわからない女を入隊させることがどれだけ危険か非常識か。だが生憎ここには普通の思考を持った人間はいないらしい。上の命令とあれば無視もできない。仕方ねぇ、監視も兼ねてしばらくは様子を見るしかなさそうだ。
はぁーっと大袈裟にため息を吐いて立ち上がって部屋を出る。山田が待機している客間に戻ると先程と変わらず伸びた背筋のまま正座で待っていた。
「副長補佐としてここに置く」
山田は少し目を見開き驚いている様子だったがすぐに真顔に戻り頭を深々と下げた。
「よろしくお願いします」
礼儀はきちんとしている、と感心したのも束の間スッと何かが鼻を掠って火のついたタバコの先端が切り落とされた。
「…っ」
「すいません、タバコの煙が苦手で」
目の前には刀を手にした山田。火種が消え短くなったタバコ見て、切り落としたのはすでに鞘から抜かれたその刀だと理解するのに数秒かかった。
「…お前」
「大丈夫です、お顔にキズはついてません」
「そーゆーことじゃねぇよ。今怪しい動きしてみろ、すぐスパイ容疑で牢屋にぶち込むぞ」
「スパイ容疑?」
「俺はまだ認めてねぇって言ってんだ。コネだけで簡単に入れるもんじゃねえんだよ真選組舐めんな」
「私が攘夷志士だと言いたいんですか?」
疑われていることに疑問を持っているようで山田は不思議そうに首を傾げた。いきなり刀抜くような奴がよく言うわ。てゆーか何、タバコに親でも殺されたのかコイツ。ゆっくりと抜いた刀を鞘に戻す山田を見て常に命を狙われるのは今に始まったことではないが、また面倒事が増えたと気分が重かった。