しちさん



「おーいシチサン!」


「張っ倒しますよ」




自販機で飲み物を買おうと階段を降りていると少し離れたところに金髪を見つけ声をかけると、顰めっ面でこちらに振り向く七三分け。彼の眉間の皺の度合いでストレス指数が分かるのは同級生として過ごすことが多いからだろうか。ノンストレス男こともう1人の同級生の灰原の眉間に皺が寄っているのを見たことはない。



「じゃんけんしよーよ、飲み物賭けて」


「嫌です。苗字が勝つまで繰り返される理不尽な勝負は勝負とは言いません、他を当たってください」


「またまた〜負けるのが怖いの?男なら勝負しろよー」

「そうやって煽っても無駄です。そしてじゃんけんに男も女も無い」


「お、今日テンション高いね。いいことあった?」



七海が饒舌、というか私の言葉に対してそれ以上で返してくる時はだいたい機嫌が良い時である。それが分かってきたのも最近で、これも過ごしてきた時間が増えてきたからの発見だ。目の前で金髪の七三分けは理解できない、と言った怪訝な顔でこちらを見下ろしている。それに構わず「さいしょはグー!」と嗾しかければ反射なのか諦めたのか七海も右手でグーを出した。


「じゃんけんぽん!」


「…チッ」


「舌打ちした?てか1発で決まったね、ココアでよろしく」





負けを潔く認めてココアのボタンを押した七海の横に立ち落ちてきた缶を拾い上げる。その場でプルタブを開けて一口飲んで彼に視線をうつすとバッチリこちらを凝視していたことに驚いた。



「何、そんな悔しかった?」

「いえ、なんでも」


「横顔に見惚れたか」



「…馬鹿ですか」




冗談とはいえ自分で言っといてだんだんと恥ずかしくなってきた。隣の男は少しばかり顔を赤てふいと視線をそらし明らかに照れているからこちらまで気まずくなる。

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