「...名前さん、これ以上、他の男と話さないでください。僕の視界にそんなものを入れないでください。もう...いっそ、監禁してしまいたいです」
壁際に追い詰められ、彼、黒子テツヤの冷え切った瞳が真っすぐこちらを見据える。
相変わらずだ、と私は笑った。
この人は少し不器用すぎる。
どうして思考がそちらに転ぶのかよく分からない。
本当に私を手に入れたいならもっとシンプルな方法があるというのに。
「監禁?そんな変なことするくらいなら私と結婚すればいいじゃん!普通にそっち申し込めばいいのに」
「...え?」
彼が私の言葉に反応出来るまで数秒かかった。
「結婚して、毎日一緒にいれば私が誰と話してるかとか毎日何してるかとか、食べるものの好みだとか色んなものが見えるでしょ?監禁よりもずーっと健全だと思うんだけど?」
そこまで言い終えると彼は完全に固まった。
多分あまりにも予想外の返事がかえってきた為一瞬、思考回路がショートしてしまったのだろう。
二人の間に沈黙が広がった。
「け、結婚...け、けっ...こん......?」
まるで壊れたラジオみたい。
動揺しまくりな彼に更に言葉を続けた。
「私、わりと料理も得意だし、家事もひとり暮らしやってきたわけだから一通り出来るし。知ってると思うけどこの年までまだ...だったくらいだし?ちゃんと貞操観念もあると思うよ?毎日ただいまって私の元に帰ってきてくれるなら、外出も控えてテツヤの帰り待っててあげる」
私がそこまでいうと彼は膝を付き目からボロボロと大粒の涙を溢した。
「...名前さんは...っ本当に...僕を狂わせる天才です...ね」
そう言って、彼は頭を抱え、耳まで真っ赤に染めていた。
こういうところは結構可愛いと思うんだよなと思いながら腰を曲げ彼の頭を撫でた。
変わってるなとは思うけれどここまで私を好きになってくれる人なんてもう出会えないと思うし中学からの友達だからどんな人かってことも知ってる。
あとまぁわりと顔とか声とかも好みだし。
そこまで考えてとある可能性に気が付いた。
「私わりとテツヤのこと好きだったのかもね」
「...名前さんっ!」
そんな可能性を口にすれば彼は私の足にしがみついて更に泣いた。
「僕のこれから先の一生を貴方に捧げますっ!!!だから貴方ももう僕から離れないでください!!」
その台詞を先に言えばよかったのに。
真面目そうに見えてわりと抜けてんだよね。
まぁやっぱりちょっと重いけど。
「はいはい、よろしくね」
だからこんなに重い彼には私くらい適当な人間がいいのかもしれない。
足して割って丁度いい、的な。
取り敢えず私に嫁の貰い手が出来たってことだ。
「お互いの親に挨拶しなきゃね〜。新しい服買おっかな〜」
「っ、僕がプレゼントしたいです!させてください!」
涙でぐちゃぐちゃの顔を上げて彼はそう言った。
私は持っていたハンカチで彼の顔を拭いてあげた。
「じゃあ顔洗って、テツヤの準備が出来たら買い物行こっか。お礼にご飯は奢ったげる」
そう返事をするとまた彼の目から涙が溢れてしまう。
出発出来るのはまだまだ先になりそうだ。
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