>>これがよくある朝なのだ!








もぞもぞ。

もぞもぞもぞ。


只今の時刻、午前10時半。


布団の中でしばらくでごろごろしてから、少女はゆっくりと体を起こした。

まだ開けきらない目を擦り、大きな欠伸をひとつ。

「ふああ…起きるかあ…。」

よっこらしょと、見た目にそぐわない掛け声でゆっくりと立ち上がった。

少女の名前は<松野小松>

松野家の長女、七人兄妹の末っ子である。



ゆっくりとした足取りで階段を下り、居間へ向かうと、そこには朝ご飯を食べる六人の兄たちがいた。

「おはよ〜、兄ちゃん達。」

「あ!!!!小松だ!!!おはようございマッスル!!!」

大きく口を開け、元気よく挨拶するのは、五男の十四松。

「おー、おはよー小松。」
「フッ…良い朝だな、マイシスター。」
「うるせえぞクソ松。…おはよう、小松。」
「おい、朝からケンカすんなよな。おはよう、小松。」
「小松、おはよ〜。」

十四松を筆頭に、長男のおそ松、次男のカラ松、四男の一松、三男のチョロ松、末弟のトド松が挨拶をする。

小松がおそ松とカラ松の間に座ると、チョロ松がお茶碗に盛ったご飯を差し出す。

「はい、小松のご飯。」

「ありがと〜チョロ松兄ちゃん。今日の朝ご飯も美味しそう〜、いただきまーす。」

もぐもぐ。
カチャカチャ。

朝はみんな比較的静かなようで、居間には食器の音だけが聞こえる。

窓からはぽかぽかとした日が差し込み、暖かい。

穏やかでゆったりとした時間が流れる。



そんな時間を破るように、チョロ松は言った。

「いや、今日は平日なんだけど?!?!」




>>>




「なんだよチョロ松、うるせーなー。」

「うるせーなーじゃないよ!俺たち六つ子ならまだ分かるよ!分かりたくないけど分かるよ!
でも、小松は仮にも高校生だろ?!学校は?!」

チョロ松は勢いよく小松の方を見た。そんなチョロ松とは裏腹に、のんびりとした口調で小松は答える。

「あー…、あのね、起きたらもうすでに、10時を過ぎててね、どう足掻いても間に合わないな〜って。」

「それで諦めたのかよ…。ったく、そんなんで単位大丈夫なの?いい加減卒業しないとヤバいからな?」

「あ〜、卒業…。やばたん。やばい、単位をくれ…。」

「マジ兄が兄なら妹も妹だよな!!」

やれやれと、チョロ松は呆れながら他の兄弟達に視線を移す。

「チョロ松兄さん、それ盛大なブーメランだよ。」

トド松がもくもくとご飯を食べながら言った。

「まあでも、チョロ松兄さんの言ってることもよく分かるよ。流石に19歳でまだ高校生はねえ…。」

「だろ?流石の俺達でも高校は普通の歳で卒業したよ?」

「まあ、その見た目なら高校生…いや、小学生でもいけるけどね。」

お茶を飲んでいた一松がぼそりと言う。

「はははっ小松の見た目はマジで小学生だもんな〜!いーじゃん、電車とかバスとか子供料金で乗れるだろ?」

「うんうん、確かにー!」

「えー!一松兄ちゃんもおそ松兄ちゃんもひどい〜!十四松兄ちゃんも同意しないでよーう!」

兄達の言葉に、小松はわざとらしくほっぺを膨らませる。

「そう言ってる割にはそんなにショック受けたような顔してないけどな。てか見た目が小学生でも中身は19歳なんだから、普通に詐欺で捕まるわ!」

「ちえー、チョロ松兄ちゃんのケチ〜。」

「いや俺のせいじゃねーし。」

「フッ…それくらいキュートな見た目だということだろう?俺はそんなお前を愛おしく思ってるぜ、マイシスター…。」

「うわっ何それカラ松兄ちゃん。鳥肌たった!」

「えっ。」

カラ松の発言に小松はオーバーに自分の肩を抱く。

その隣ではおそ松がイタタタタとお腹を押さえた。

「ほんと、カラ松兄さんてイッタイよねぇ〜!」

「?!トド松大丈夫か?!」

「絆創膏あるよ!いる?!?!」

「大丈夫だよ、十四松兄さん。」

「じゃあ湿布?!トド松兄ちゃん!!」

「だから大丈夫だって!何で小松もボケたし!いや、カラ松兄さんと十四松兄さんは天然か…?」



わいわい。

がやがや。



静かだった居間は、いつの間にか賑やかな声に包まれていた。

窓からは、変わらず暖かい日の光がぽかぽかと差し込んでいる。

空はからっと晴れて清々しい。

そんな窓の外を見てから、小松は未だ騒いでいる兄達を見てにっこりと笑った。



「兄ちゃん達、今日は一緒に遊ぼ!」







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