>>なりゆきの長男改造計画。









「ねー、小松まだ〜?」

「あともうちょっとー!」

午前11時。トド松が玄関で小松を呼ぶ。
かれこれ三度目である。

「んあ?何、トド松小松とどっか行くの?」

それを見ていたおそ松がトド松に訪ねる。

「うん。ちょうど買いたい物もあったし、
他の女の子達はみんな今日は空いてないみたいだしさ〜。」

「そりゃ平日だしな!てか俺も暇なんだよね!
ついていって…」

「ダメ。」

即答である。

「え〜?! 何で?!」

「だって、今日行くの原宿だし。おそ松兄さんは、どうせそのパーカーで行くつもりなんでしょ?」

「そうだけど。」

「無理。チョロ松兄さん程じゃないけどダサい。」

「はあ?!なんだそれひどくね?!」



トド松の理不尽な言葉におそ松がキレかけた時、やっと小松が二階からおりてきた。

バッチリと決めた姿で。

髪は全体を緩く巻いてあり、前髪は流行りのシースルーバングに。

目元はタレ目アイラインに、軽くダークブラウンとボルドーのシャドウをのせて抜け感を演出。

マスカラは下睫毛まで入念に。

ほっぺにはふんわりと色付くピンク色のチークで愛らしさを。

唇はグロスでぽってりと赤く。

服はパステルカラーのワンピースとソックス。

そして全体を引き締めるように、アウターは黒のライダースを羽織っている。




「もー、遅いよ小松ー。」

「えー!これでも急いだんだよ〜。てかトド松兄ちゃんは、私に対する態度と他の女の子達に対する態度違うくない?!」

「だって身内だし〜。」

言い合いをする二人に、おそ松はおずおずと声をかけた。

「俺はやっぱいいわ…。」

「でしょー?」

「え!おそ松兄ちゃんも一緒に行く予定だったの?!」

トド松よりもバッチリ決めた小松は、見た目だけはどこからどう見てもリア充で、
おそ松は心の中で若干妹と壁を感じた。

(化粧ってすげえ…。てか小松の化け方がやべえ!ちゃんと年相応に見える!)

ずっと自分達六つ子と、この妹は同類だと思っていたが、本当は違うのではないか。そう思ったその時、

「あ、ねえねえ!今日の私、ちゃんとリア充っぽく見える?!」

小松が兄達を見て言った。

「は?」

おそ松はぽかんとした顔で小松を見る。

「大丈夫、バッチリだよ小松〜。」

トド松はその質問に何の疑問も無いように答える。

「良かった〜!これで安心して出掛けられる!」

「じゃあ小松、一緒に写真撮ろ♪SNSに上げる用に〜!」

「良いよ〜!今日のメイクは特別うまくいったからね!」

「「うえ〜い♪」」

仲の良い兄妹らしく、顔を寄せ合って決め顔をする二人。

パシャリ。



「は、え?」

おそ松だけ置いてけぼり状態である。

「な、何、リア充っぽく見えるって…?」

「え〜、そのままの意味だよ?だって原宿だよ!
こうしてリア充になりすまさないと怖い怖い!!」

小松が頭をぶんぶんと振りながら答える。

その答えに、おそ松は内心ホッとした。

(やっぱりこの妹は俺達寄りだった!!!壁なんてなかった!!!

ちょっとトド松に似てるだけだ!!!)

「へへへ、そういうことか〜。」

にやにやと笑いながら鼻の下を擦る。

「え、何でおそ松兄ちゃんそんなに嬉しそうな顔してるの…?」

「別に〜何でもねーって。」

「?? 変なの〜。」

「あ、小松、もう出ないとショッピングの時間なくなっちゃうよ。」

しばらく長男と妹のやりとりを見ていたトド松が言う。

「わ!そうだね!…おそ松兄ちゃん、本当に一緒に行かないの??」

靴を履こうとした小松が、おそ松の方を振り返って言った。

「だって俺そんなおしゃれな服とか持ってねーし…。」

「うーん…あ!じゃあ私がコーデしてあげようか!!」

「え?」

「は?」

小松の突然の提案におそ松だけでなくトド松も驚く。

「まてまてまて、小松。俺、おしゃれな服持ってないって言ったよ?どうやってやるの。」

「そうだよ小松〜。しかもこのおそ松兄さんがリア充に化けれると思う?」

「はあ?!なんだそれトド松!ひどくね?!」

「大丈夫。私に任せて!」

兄達の不安をよそに、小松は力強く頷いた。







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