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「どう?いい感じ?感じる?」
「…………特に…何も…」
「ふーん…」

後田くんは俺の返答に口をへの字に曲げ、首を傾けた。

「そっかー。まー、俺も特にないなぁー。てか、ようくん、従順すぎるでしょ!」
「……うん。ごめんなさい。」
「んー」

後田くんは珍しく真顔で、じぃーっと俺を見つめる。
いつもニコニコしている目が見開かれ、穴が開きそうな位に見られる。
この観察される感じは苦手だ。
目が泳ぎそうになる。
冷や汗が垂れていないか。
身体が震えていないか。
声が震えないか。
俺は後田くんに気づかれないように、そっと奥歯を噛み締めて耐えた。
だって、本当は凄く怖い。
今の俺は、拘束されているからだ、
後ろ手に拘束され、更にその手は俺の首輪から伸びるベルトに繋がれている。
足首には棒を通され閉じる事も出来ない。
これを全裸でされているんだ。
そんな状態で、後田くんに見下ろされる。
これで怖くないはずがない。
そして俺が怖がっている事が後田くんに知られたら、後田くんは喜ぶんだろう。
そうなるとこの行為は長引く。

「あーあ、華川先輩のおすすめでも、そうでもないものって初めて。」
「…」

華川先輩、やたら後田くんが懐いている先輩だ。

「うーん…そもそもようくん、山田先輩みたいに抵抗しないから、拘束する意味もないしね。」
「…。」

早く後田くんに興味をなくして欲しい。
俺は努めて平常心で、時間が過ぎるのをまった。

ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ…

「んー。」

後田くんはてもちぶたさを紛らわすかのように、身体に手を滑らせてくる。

「自由にようくんの身体を触れて嬉しーっ!とかなるのが醍醐味なんだろうけど…、ようくんはいつでも、俺には触らせてくれるもんね?」
「う、ん…。」
「俺にだけ。俺だけは、好きなだけ良いんだよね?」
「うん…。す、好きなだけ…いいよ。」
「ふふふ♡そうだよね。ようくんは、俺のものだもんね?」
「うん。俺は、後田くんのもの…です…。」
「あっは♡」

後田くんはくすくす笑いながら、俺の肩に顔を埋める。
なんとなく、そろそろ終わりそうなのは嬉しい。
しかし未だに体を這い回る後田くんの手が気になる。

「…っ、じゃ、もうこれ…」
「折角だし、これで一回やってみる?」
「え」

後田くんの手がするすると下がる。

「…っあっ‼︎」
「ん?何?」
「…あ、いや…」

この状態でなんて怖い。
まず、拘束を解いてほしい。
俺が思わず声を上げると、後くんが不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。

「う、後田くん。俺、いつものがいい。」
「…ふっ、いつもの?」
「…」

意図せず強請るみたいな発言を吐いてしまった。
後田くんが含み笑いで聞き返してくる。

「なになに?いつものって、何?」
「…っ、ベットで…」
「ベットで?」

寝たい。
本当にしたい事はベットで寝る事だ。
しかし今の楽しそうな様子の後田くんに、そんな事は言えない。
羞恥心で顔が熱い。

「ベットで…えっ、エッチしよ。これなしで。」
「ぶっ‼︎…っあははははは‼︎」

案の定、後田くんは俺の回答に大笑いだ。
恥ずかしい…。

「やばー!可愛い〜‼︎『えっち』って!」
「…」
「もっかい!もっかい言って!あ、そうだ。ボイス録音しよ。スマホ何処かな〜」

後田くんははしゃいで、俺をそっとベットに寝かせた。
こんなふうに縛っておいて、「腕大丈夫?」とか尋ねつつ、丁寧に扱われるから混乱する。
あと俺が1番言いたいのは「この拘束具なしで」という部分で、そこじゃない。

はぁ…
まず拘束を解いて欲しい。
兎に角、体の自由が欲しい。

ポンッ
軽い音と共に、俺の苦痛の時間が始まる。

「で、なんて?」
「うっ」

ていうか、下から取らないで欲しい。
現状、俺は足を限界まで強制的に開かされているんだ。
丸見えじゃん…。

「なんてなんて?」

しかし後田くんはそんな事に構わず、もしくは知っていてか?
兎に角、至極楽しそうにカメラを回す。

「う、後田くん…、あのっ、これなしで、俺と、ベットで……え……………してください。」
「っあ〜〜‼︎肝心なところが抜けてるけど?はい。もう一回!」

いつもより後田くんがハイテンションだ。
嫌だな。

「…ベットで、俺と、…っえっち…してください…。これ…なしで…。」
「どんな?」
「ど、どんなって…」
「うん?」

何が正解か分からない。
しかし、もうこの状況が苦痛すぎる。

「俺の…おっ、…っお尻に…後田くん、の、を…い、……挿れてください…」
「もう挿れてるのはあるけど?」
「ふっ‼︎」

後田くんがぽちりとボタンを押したのは、俺の中に入れられている玩具の電源だ。
急に動き出すので、びくついてしまった。

「ぁっ、ん…っあぅっ!」

しかもいつもと違って身体の自由がほぼないから、上手く快感を逃さない。
思わず腰をくねらせ、喘いでしまった。
恥ずかしい…。

「後田くんっ、ちょっ、…っあ、うっ…」

後田くんをみて、まずいと思った。
俺を真顔でじっと見つめ、その目はギラついていた。

「…ぁっ、んんっっ‼︎」

後田くんがごくりと生唾を飲む。

「あー、分かったかも…」
「…ぇっ?…っ」

反射で後田くんから体をひこうとしたら、足に通されたバーを掴んで無理矢理引き戻された。

「不自由な感じでふるふる震えて、抵抗できず、何でもしてくださいって感じ…いいかも…」
「ちょっ、あっ、」

後田くんは俺の胸に手を這わせた。

「俺の好きにしていいの?」
「やっ、怖っ…っ‼︎」
「あはー♡やっぱり怖いんだ♡」
「うっ」
「さっきからやたら『これなしで』連呼するし。」

バレた。
案の定、後田くんはニヤリと黒い笑顔を浮かべる。

「これでしよっか?♡」
「うゔ…っ」
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GARDEN/U N I O N/溺愛/至上主義