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どうしよう。
あれは…足だった。
青くて細かったが、小刻みに震えていたから生きている。

あぁ、どうしよう。
同僚が…ぁぁ、うわっ…ヤバい。

最初から変だった。
シューズボックスに鍵が付いていた。
そんなもんかと思っていたが、考えてみるとやはりおかしい。
後田は、ブランドスニーカーの踵を潰して履いている。

「…きっと、助けを求められたんだよな…?」

見つけた時は怖くなり、咄嗟に気づかないふりをしてしまった。
呼んでおいて隠れたのは、俺の後ろに後田がいたからだろう。
つまり犯人は後田だ。
ただ生きてるから殺人とかじゃない。
でも震えていて、部屋の至る所に鍵がかかっていた。
…監禁?

「警察…」

そして手元のスマホに視線を向ける。

「えと…1…1………」

かけたことはないがよく知っている番号を打ち込もうとして、俺は手を止めた。
これ、大丈夫か?

ブーブー

「!…後田…」

嫌な予感は当たる。
やはり後田からの連絡だった。
何処かで監視されているのではと、俺はあたりをキョロキョロと見渡してしまった。

『今日はお疲れ!資料できて良かったな!あと、うちの猫が煩くてごめんな。あの猫は室内飼いだかさ、逃したらお前の事を恨んでたぞ笑』

……。
笑 じゃねーよ!
脅しじゃねーか!

「…やっぱり…あいつにとって人は石ころなんだ…」

きっと後田にとって、全部がそうなんだ。
あの部屋で大切に仕舞い込んでいる『猫』以外は。

「…こんなの…、助けられるわけ、ないだろ…」

後田の事だ。
更に保険をかけているはずだ。
俺なんかは一瞬で黙らせるものを。

「……」
『そっか。猫がいたのか。音の原因はそれか。逃さなくて良かった〜。プレゼンの資料もお疲れ。今日はありがとうな!来週の報告頑張ろう!』

仕方ない。
後田が俺に駒であることを望むなら、それに従うしかない。
俺が後田の猫に気づく事も、事実を知ったとしても黙っている事も、全部後田の想定通りだろう。

俺は心の中で、どこの誰かも知らない人に謝り目をつぶった。
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