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6話後の話
※友野視点

「たい…が…たい…ったいがぁ…」

どれ位この名前を呼んだか知らない。
声が掠れて、意識が朦朧とする。
ヒート中だと言うのに粗相をした俺は、後ろ手に拘束され、寝室のベット脇の床に繋がれて放置されていた。
放置されて半日?もっと?
時間の感覚がない。
何処かに擦る事もできず、立てた両膝を擦り合わせて震えていた。

「たいがぁ…ごめんなさい…ごめんなさ…ごめんなさいごめ、っ、さい…ごんなさいごめんなさいごめんなさい…たいが…たいがぁ…」

ぽたりと、こめかみに汗が伝う。
風呂に入っていた時に見つかり、そのまま繋がれたので全裸だ。
目線を落とすと、ガチガチに興奮した自身が目に入る。
情けなくて辛くて、更に涙が溢れてくる。

「たい…っ、たいが‼︎」

その時、甘い匂いがいっそう強くなった。
大我がきた!

「くせーな」

しかし部屋に入ってくるなり冷たい態度だった。

「ごめんなさいっ!大我ぁ‼︎」

俺は反射的に謝った。

「俺、お前のミントみたいな香りが好きなんだけど?」
「…え」

香り?

「今のお前、興奮しすぎて甘ったるいな。」
「…そ、それは…」

フェロモンか。
大我は冷たくこちらを一瞥すると、俺を通り過ぎて寝室の窓を開けた。

「ほら、だせよ。いつもの香り。」
「!」

そして俺にドスドスと近づくとかがみ、乱暴に俺の顎を掴む。

「た、大我ぁ…っ、ふ…っんんっ〜〜っ!」

昂りすぎた体は、つがいが触れただけで喜びに打ち震える。

「だめ。」
「あうっ‼︎」

しかし大我はそんな俺にすぐに気づき、俺のものをきつく握った。

「出すのはそっちじゃねーだろ?」
「うぅ…っ」

堰き止められて、俺は目を瞑って縮こまる。

「ふうっ、ふぅっ、…っ!あっ、かなっ…っわかんな…っっ‼︎」」

フェロモンを自在に操れる訳がない。
冷静にそう思うが、それよりも焦燥感に駆り立てられて思考が冷静さを保てない。
そんな俺を、大我はじっと見つめていた。

「出来ない?」
「うぅ…わかんなっ…っ」
「…」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、大我…大我ぁ…っ」

堪らず、ぼろぼろと涙が出てくる。
俺は縋るように大我を見上げた。

俺にとってセックスは人との繋がりを感じるもの。
なくてはならないもの。
通常時は理性で制御出来るが、ヒート期間になるとそれが出来ない。
本能のまま求めてしまう。
セックス出来ないのが辛い。
だから大我と離れられない。
大我はそれを分かってて、こういう仕置きをしてくる。

「お願い…っ、大我ぁ…お願いしますっ、…っ、俺と、…っしてくださいっ、お願いしますっ、俺と、してくださいっっ…っ」
「…」

もうなりふり構ってられず、泣いて大我に縋る。
不自由な手の代わりに、大我の手に必死で頬擦りした。

「してください?」
「うぅっ、…っ、させて、させてくださいっ!大我…お願いしますっ…っ、ふっ、…お願い…お願い大我…させて…」
「なにを?」
「…っせ……っ」
「なに?」
「っ」

自分からこんなに憎い相手に縋るなんて。
一瞬、口に出すのを憚ってしまった。

「…は、分かった。まだ反省が足りないみたいだ。」

大我は俺を鼻で笑い、ぱっと俺から手を離した。
そして立ち上がると、足早に部屋から出て行こうとする。

「せっ、セックス!」

ここで放置されたら後どれくらいおあずけをくらうか分からない。
俺は慌てて叫んだ。

「あ?だから何?」

大我は足を止めて振り向いたが、言い方はなおも冷たい。
俺は顔を真っ赤に、絞り出すように続けた。

「せっ…っセックス…俺にさせてください…っ、ふっ、お願いしますっ。大我、俺に、セックス、させてください…っうぅっ、い、…っ挿れてください…っ、大我ぁ…大我が欲しい…」
「へー?そうなの?」
「はい…っ、お願いします。大我、俺と、セックスしてください…っ、お願い、大我…大我と、させてください…大我としたいです…っ」
「ふーん?」
「お願いします…っ、大我とセックスさせてください…っ、大我とさせてください…っ!お願いっ、…お願いします…大我ぁ…大我…」
「へー」

大我は勿体ぶって顎に手を当てる。
何かを考えるような顔だった。

「ゆー、反省してないだろ。したいしたいって、自分の要求、そればっか。」

しかしまだ許してはくれない。

「…っ」

淡い期待が打ち砕かれ、俺はぐしゃぐしゃで泣く。

「ごめんなさい…っ、ごめんなさい…反抗、したのっ、反省してる…っすみませんでした…っ」

俺は慌てて、可能な限りで頭を下げた。
そんな俺を見て、大我が目細めた。

「…あ」

また甘い香り。
俺は香りにつられて顔を上げた。
屈んだ大我と目が合う。

「なんでこんなことなってんの?」
「っ、俺が、…間違ったから…」

ここでまた過ちを犯すわけにはいかない。
俺は慎重に答えた。
俺の返答に大我は表情を変えない。
正解?
不正解?
どっち??

「なんで間違うんだよ。」
「…ふっ、…っ」
「なんで、なんでだよ……」

大我はどこか項垂れているようだった。
なんで大我が?
不思議に思いながらも、俺は黙って大我を見た。
余計な一言で、大我の機嫌を損ねるのも怖い。

「ゆー」
「はい…っ」

名前を呼ばれて、俺は掠れる声で謝った。

「…」
「ふっ、」

大我が俺の顎を掴み、キスをした。

「んんっ〜〜〜っ、‼︎」

いきそう。出そう。
しかし大我の許可はない。
俺は必死に耐えた。

「…今度は耐えた?」
「はい…っ、」

大我がその事に気づき、ニッと笑った。
その顔に少しだけ安堵する。

「心入れ替える?」
「はいっ、ごめんなさいっ…っ入れ替えるっ!…っ入れ替えて、もうしない、しないから…ごめんなさい…っ」
「そう?」

俺は涙を流しながら、コクコクと頷いた。

「…はぁー、本当かよ」
「うぅ…、信じて……っ」

大我はまたため息をついた。

「じゃ、今度はしっかり俺を満足させろよ。へばらずやれよ。」
「はいっ…っ、やっ、やらせて頂きます…っ」

大我が俺の手枷を解く。
俺は解放されるのを今か今かと待つ。
その僅かな時間が辛かった。

「じゃ、まずは騎乗位でな。」
「…ふっ、はい…っ」

俺はベットに足を伸ばして座る大我に近づき、痺れた手に鞭打ち、そのベルトを外す。
もうこの苦しみから解放されるなら、なんでも良い。

「ふっ、…ぁ…ん」

大我のものを出し、キスをする。
キスをしないと大我が怒るから、これはそう言うルールだった。
今は欲しくて仕方ないからか、幸いいつもの様な嫌悪感はない。

「……っ」

そう言えば、たきとやるときも騎乗位が多かった。
何故か俺はたきの事を考えていた。
大我のものを手に、たきのことを考えるなんて…。馬鹿らしい。

「ゆー」
「…っはいっ」

その時、ふと大我に名前を呼ばれて顔を上げた。

「?ぁ…、な、」

そして大我が俺の両腰に手を添えた。
俺は戸惑いの声を上げる。
あれ?俺がやらなくて良いの?何する気だ?

「ゆーが先にイったら、またお仕置きするから」
「え」

大我が口の端を上げて言った言葉に俺は顔を青くする。

「あ、ま…っぅあ゛‼︎〜〜〜〜っっ‼︎」

俺の言葉を待たずに、大我は俺の体を引き下ろした。
待ち侘びた感覚に身体が喜び、俺は盛大にのけぞった。
そしてどくどくと勢いよく吐精する。

「はは、あーあ。いっちゃった。」
「ぅ…っ、ふっ…っっ」

俺はまた涙を流す。
その涙にキスを落とし、大我は俺をガクガクと揺さぶる。

「やめっ…まっ、いま、出たから…っ今、あ、また…っっ!ふっ、〜〜っ!あ」
「知らねーし。」
「う゛ぁっ、だっっ!〜っ‼︎」

俺が堪らず丸まってもお構いなしだ。

「はっ、なぁ、ゆー」
「うぅ…っ」

大我は騎乗位って言ったのに、何故か俺を倒して正常位で入れ直しながら話しかけてきた。

「次、どんな仕置きして欲しい?」

ニタリといつもの下衆びた笑顔。
そんな顔を見ながら、俺はまた馬鹿みたいに「ごめんなさい」と謝った。
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