5
ピンポーン
「?…黒崎さん…」
インターフォンがなり出てみると、相変わらずの渋い顔の黒崎がいた。
「どうしましたか?」
「…」
黒崎は答えずに、眉間に皺を寄せたままこちらを見下ろす。
「…あ」
(上司がきて玄関で話っていうのも失礼か…)
「どうぞ、あが…」
(で、でも…)
そこで本田は固まる。
黒崎を直ぐに家に上げられない理由があった。
「じゃ、あがらせてもらう。」
「え、ちょ」
しかし黒崎は本田の話を聞かずに強引に部屋の中に入った。
「黒崎さんっ!」
「…本田」
そして、リビングで足を止めた。
見られたからだ。
「これは、深谷がやったのか?」
「…」
本田の部屋の中にはカメラが数台設置されているからだ。
「お前、深谷と好きでこんな関係なのか?」
黒崎は本田に詰め寄る。
本田は黙り込んで、下を向いた。
「お前、最近仕事にも集中していないぞ。」
(そんな事、言われても。元はと言えば、お前のせいだろ!)
黒崎が自分に最初にあんな事をしたせいで、深谷に脅されているのだ。
「…深谷、黒崎さんと俺の動画か何か持っているみたいです。」
「動画?」
黒崎の眉間に皺がより、目を細める。
相変わらず怖い顔だ。
思わず目を逸らしてしまう。
「そんなものはない。」
「え?」
「はっ、そうか。話は読めた。」
黒崎は自分の中で何か解決したらしい。
ツカツカとカメラに近寄る。
「おい深谷。どうせ見てんだろ?お前の嘘はバレたぞ。金輪際、本田にこんなことはするな。」
「………黒崎さん、そのカメラはリアタイ配信じゃないやつです…」
「…」
本田の指摘に黒崎はムッと口を閉じる。
(ていうか…)
「嘘って…どういう事ですか?」
「動画なんてこの世に存在していないからだよ。」
「…え。でも、エレベーターでとか…」
本田は目を丸くして聞き返す。
「あれは嘘だ。お前を大人しくする為に、俺がそう思わせただけだ…。で、袋あるか?」
「…」
黒崎はカメラを強引に取りはずしながら、本田に尋ねる。
(…なら、なんで……)
安心感と微かな怒りが湧く。
「でもまさか、こんなふうに深谷に利用されているとは…。お前と俺のやり取りを見てカマをかけてきたってところか。……すまなかったな…。」
黒崎はつらつらと謝罪の念述べる。
余りにもあっさりとしていた。
「……そのせいで…そのせいで俺がどれだけ…」
「だから、すまなかっ……」
カメラをあらかた取り外したところで、黒崎は本田を振り返る。
そして目が合うと黙った。
本田が涙目だったからだ。
いい歳して人前で泣くなんて避けたいが、止められなかった。
「本田…本当に、悪かった…」
「……せ、…くださ、い…」
「…え?」
「責任取ってくださいよ!」
「…」
思わず怒鳴ってしまった。
だってこちらに怒る権利はあるはずだ。
黒崎にあんな事をされてから、自分の体はおかしい。
こんな、理想的な人生設計からそれ過ぎている。
黒崎は、本田を射抜くように見返すが、何も言ってはくれない。
———-
「本当に大丈夫か?」
「はい…あの、も、本当にそういうのいいんで…」
とりあえずもう何でもいい。
何でもいいから欲しい。のに、黒崎は何度も確認してくる。
本田はベッドの上で頭を掻きむしりたくなる。
ちなみにパンイチだ。
黒崎も眉間に皺を寄せた強面なくせしてパンイチで、絵面としてはアホくさい。
「良くない。お前は浅はか過ぎるぞ。大体…」
「も、もう…我慢させられ過ぎて辛くて、限界なんです!」
「っ!」
何でもいいから出しやがれ!
自分でも浅はかだとは思う。
(しかしこちとら禁欲何日かも分からんくらいな上、お前にやられてから変な性癖発症してんだよ!)
本田は黒崎に飛びかかった。
黒崎は思わずよろけて後ろに手をつき、本田が馬乗りになる。
「……」
(でっけぇ…)
ごくり。足に当たる感覚だけで分かる。
(早く…)
熱に浮かされた顔で黒崎のものに手を伸ばす。
「お前、因みに性病とか大丈夫か?」
「はぁ⁈」
伸ばした手を掴んで制し、黒崎は小馬鹿にしたように聞いてくる。
本田は思わず苛立った声を上げた。
「ふっ、いや、嘘。」
「!」
そこで視界が反転した。
いつの間にか立場が逆転し、本田がベットに寝てその上に黒崎がいた。
「ふっ、」
黒崎はキスをしてきた。
性格や性癖が見える、荒めなものだった。
これからの快感を待ち望み、頭がホワホワしてくる。
「いいか本田。」
「…ふぁっ、ふぁい…」
既に惚けた返事をする本田に、黒崎は苦笑いを漏らしていた。
「これは、その…ただの遊びだから…。ロールプレイ?だからだ、その、お前が自分の癖について後ろめたく思う必要もない。」
「…」
(あ)
黒崎は打って変わって、真剣なトーンだった。
「ほら、俺だって、お前見てこんななってるから、同じ。お前だけじゃないからな…」
確かに、黒崎のものも硬くなったいた。
(俺を気遣って…?)
きっと黒崎なりの気遣いなんだろう。
案外優しいところもあるようだ。
「はい。ありがとうございます。」
(……のはいいが…正直、俺の癖的には、もっとガンガンにきて欲しい…)
ちょっと萎えた。
こくりと頷くと、黒崎はふっと笑いまた本田にキスをした。
「…ふっ…っ!」
(あれ?か、噛まれ…)
黒崎はキスの合間にカプカプと本田の舌を噛んだ。
本田が噛まれる度にビクつき、涎が口の端から垂れる。
そしてキスをしながら、器用に本田の後ろを解かす。
ここで悲しい性癖がでる。
きっと黒崎は気を遣って最初は優しくきたが、こっちが本性だろう。
強引でサドっけがある。
そんな本性がちょこちょこ漏れ出ていた。
意識すると期待で息が上がる。
「ふっ〜〜ぁっ!」
そしてぐりっと前立腺をいじられ、本田は呆気なく吐精する。
「あ?早すぎだぞ。」
「だって…禁欲…」
「はぁ…、そうか…。まぁ、最初の10分は好きにさせてやる。」
「ぇ…っ、ん…っ!〜〜っ!」
(…っえーーー⁈最初の10分後はどうなるのー?♡……いや俺は何を…っっ!)
「ふぁっ♡!」
自分でも嫌になるが、一瞬ワクワクしてしまった。
そんな自分を戒めるが、再び余裕も無くなる程の快楽が襲ってくる。
「ふっ、そんなんじゃ、後がキツいぞ。」
黒崎が小馬鹿にしたように口の端をあげる。
ムッとするが、間髪開けずに挿入されまた直ぐに出してしまった。
「…あ゛っ」
黒崎が本田の中の狭さに小さく声を上げる。
堀が深い整った顔が快楽で歪み、色っぽい。
思わず手を伸ばすと、その手を掴まれた。
「手はここ。」
そして両手を顔の横で押さえ込まれた。
「ふっ、あっ、ぬ♡…っ〜〜っ!あぁ!」
そして動く。
下半身からの快感が強く、脳みそまで溶けてしまいそうだ。
「あっ、黒崎さんっ…ぁ♡っ、もっと、おくっ、してくださっ…〜〜っ!」
「はっ、注文が多いな。」
黒崎は思ったよりも扱いやすい。良いかも知れない。
主導権を握れる、自分専用棒、的な。
(あ〜、気持ちぃ…もう少し、強引でも良いけど、やっぱり扱いやすいのが一番…)
「…んっ、黒崎さっ、…っ、下、さ、さわっ、…っ!」
下への刺激を依頼すると、黒崎は素直に従って触ってくれた。
「あっ、〜〜っ!」
後ろを刺激されながら、くりくりと亀頭を弄られる。
ごぷりと何度目かの吐精だ。
「……はぁっ、あっ、…ん。」
始めてからまだ10分弱。
しかしそろそろ体の熱も落ち着いてきた。
そろそろペースを落としたい。
「ふっ、黒崎さん、そろそろ…ぅあっっ‼︎」
そろそろペースダウンで、と言おうとしたのに黒崎は急に今までの比ではなく奥をついた。
思わず、本田の身体がしなる。
「あっ、…んっ〜〜っ!」
しかも黒崎の動きが、先程よりも心なしが激しい。
「く、黒崎くんさん…っ、〜〜〜っ!ちょ、やめっ〜っ‼︎」
ぐいぐいと黒崎を押し返すが、黒崎は止まらない。
「ハァッハァッ…っ、黒崎さ…っ‼︎」
やっと反応しこちらを見たかと思えば、黒崎はギクリとするような黒い顔で笑っていた。
「10分経ったから、サービス時間は終わりだな。」
「あ…え?」
(10分…最初に言っていた、10分?)
きょとんとする本田を、黒崎はニヤリと笑った。
先ほどからその笑顔が黒いんですが…。
「ちょっ、わか、…っ、ぺ、ペース落として…っ、っ〜っ!」
黒崎は本田の意向を無視して、黒崎から逃れようと暴れる体を押さえ込んでキスを落とした。
最初よりも激しく、ジンと腰にくるキスだ。
「手はここ。言っただろ?」
「んっ‼︎」
仕置きと言わんばかりに、ぐりっと前立腺を刺激される。
ごぽりと、本田が吐精する。
「…はぁ、想像以上に聞き分けがないな。…やっぱ縛るか。」
「えぇ♡⁈…っっ‼︎」
反論する間を与えず、先程の弱い所をつかれた。
「ふぁっ〜〜っっ!」
本田がヒクヒクと余韻に惚けている間に、黒崎は本田を反転させる。
そして床に置いていたベルトを拾い上げると、手際良く本田の両手を後ろ手に縛る。
「あと、さっきから何勝手にいってんだ。」
「うっ!」
きゅっと軽快な音がして、両手がかっちりと縛られる。
(手慣れてる…)
そして再び、くるりと反転させられる。
「…っ、くるくる、人も転がして…何なんですか‼︎」
「はは、だって面白くないだろ。」
また黒崎は黒い笑顔で笑っていた。
「恥ずかしいこと言わせる時は、顔が見えないと。」
「え、なに?どゆ…」
(何言わされるの?)
そんなことを言われて恐怖とか羞恥とかその他色々あるはずなのに、自分の体の反応は単純だった。
下の方がきゅんとする。
体と頭が真逆の反応で混乱する。
「なんか…あぁ、いいもんあるじゃん。さすが変態。」
黒崎は鼻で笑い、ベット脇に置かれたローターを持ち上げる。
「ちっ、違いますっ!それは深谷がっ…ぁっ‼︎」
黒崎はきゅっと本田の乳首をつまむ。
思わず熱い声を漏らしてしまった。
自分の反応に、本田の顔が真っ赤になる。
それを見て黒崎がふっと笑った。
「ふっ、お前、乳首が雑魚だよな。」
(え、ち、くび、ざこ?何この人…。)
と冷静に思うのに。
「いくときはちゃんと、『いくの見て下さい』って言えよ。」
「ハァ⁈ばかですか!そんなこと…」
「言わなかったら、乳首にローター付けて、続行。そのまま続きやるからな。」
「っ!何…っ…っっ!」
まだ反論の途中だというのに、黒崎は本田を無視して急に挿入する。
軽く達しそうになるが、寸のところで踏みとどまる。
ほっと息をついたのも束の間、本性を露わにした黒崎の攻めが始まる。
「ハァッっ、…っ、あっ、…っ」
ベットがギシギシなり、本田の息は早々に荒くなる。
薄く目を開けると、こちらを射抜くような鋭い目と目が合う。
「っ!」
同じ男に組み敷かれて、手は縛られて抵抗も出来ず、されるがまま。
そのシチュエーションを再確認するだけで、きゅううっと後ろが疼いてしまる。
「…っ、さっきよりいいな。はっ、」
「ふっ、ちがぁ〜っ‼︎」
黒崎かがみ込むと、本田の耳元で囁いた。
「本田、っ、やっぱ縛られるの好きだろ?」
「んんっ!」
軽く中イキしてしまった。
そんな絶望感に浸る間も与えてくれず、黒崎は相わらず烈々と攻め続けてくる。
「…っ、今、出さずにいった?」
「ぅっ、んんっっ!…っいってなっ…ぁ♡〜〜っ」
本当はいきまくりだ。
だが安易に認めたくないし、あんな馬鹿なセリフも言いたくない。
「おい、また勝手にいったろ。ちゃんと言えよ。今度こそローター付けるぞ。」
「んゅっ〜っ!はぁっ、いって、に、…っな゛ぃいっ!」
「…ふーん…」
黒崎は片眉を上げてそういうと、身体を起こして動きだした。
今度は角度をつけ、的確にこちらの良いところをつく。
しかもやたらとじっとこちらを見つめてくる。
見透かすような視線が羞恥心を煽る。
「なっ、ふっ…〜っ、なに?」
「いや。…っふー、中イキしてる本田を見てる。」
「‼︎いって…っにゃいっって!」
「ぷっ、『にゃい』?あそ。」
吹き出して楽しそうに笑い、黒崎は更にまじまじと見つめてくる。
羞恥心で全身が紅くなり、火が出そうだ。
「見んなっ‼︎」
「別にっ、いいだろ。いってにゃいらしいから。」
「んぎっっ〜〜っ!」
黒崎にとっては、反応が見える分やりやすいのかも知れない。
その上動きやすいのだろう。
先程の比ではない快感で頭がおかしくなりそうだ。
「ぁ゛、きっ、〜〜っ!やめっ、もうむりっ!いった!いったからっ!」
「…はっ、いってないんだろ?何も出てないじゃないか。」
「うぅ、…っ!」
(だって、出さずに…)
黒崎はニヤニヤと笑いながら本田を見下ろしていた。
とっくに気づいているくせに!
「いってるの!いっ…っ、〜〜っ!メ、メスいきしてますっ!〜っ」
そろそろ色々限界で、目をぎゅっと瞑り真っ赤な顔で訴える。
感覚で、黒崎がクツクツと笑うのがわかる。
「ほんと?」
「ほ、ほんと…れっ〜〜っ、れす‼︎メスいきっ、してますっっ!ぁっ、」
「で?なんて言うんだ?」
黒崎は意地悪に笑うと、やっと動きを止め本田に次の言葉を促す。
「…っ、ぅわっ‼︎」
ぐっと黙るとコツンとつかれ、喉を見せてのけぞってしまう。
「い、…っ、いくの、見て、く…らさい。」
「ふっ」
(あ、)
ふわりと触れられる感覚。
瞑っていた目を開けると、黒崎はらしくなく柔らかい笑みを浮かべていた。そして身を屈めて、顔を寄せてくる。
本田の輪郭をなぞるように、優しく両手で顔を撫でると、そのままキスをしてきた。
最初のように荒々しくなく、優しく甘やかすようなキスだ。
頭がほわほわとして、心地良さで満たされる。
「…んっ、ふ、」
「はっ、よく言えました。」
そして優しいキスが終わると、またふわりと笑った。
胸がきゅっと締めつけられて、頬が赤くなる。
それは快感や羞恥からではない。
(う…嬉しい…)
喜びからだ。
胸が満足感で満たされる喜びだった。
「見ててやるから。いっぱいいけよ?」
「んっ♡…っあっ〜〜〜っ!」
そしてまた律動を再開した。
自分の性癖に気づいてからは、いつも達するときに何らかの後ろめたさを感じていた。
しかし今はそれがなかった。
ただただ気持ちよくて、満たされる。
「?…黒崎さん…」
インターフォンがなり出てみると、相変わらずの渋い顔の黒崎がいた。
「どうしましたか?」
「…」
黒崎は答えずに、眉間に皺を寄せたままこちらを見下ろす。
「…あ」
(上司がきて玄関で話っていうのも失礼か…)
「どうぞ、あが…」
(で、でも…)
そこで本田は固まる。
黒崎を直ぐに家に上げられない理由があった。
「じゃ、あがらせてもらう。」
「え、ちょ」
しかし黒崎は本田の話を聞かずに強引に部屋の中に入った。
「黒崎さんっ!」
「…本田」
そして、リビングで足を止めた。
見られたからだ。
「これは、深谷がやったのか?」
「…」
本田の部屋の中にはカメラが数台設置されているからだ。
「お前、深谷と好きでこんな関係なのか?」
黒崎は本田に詰め寄る。
本田は黙り込んで、下を向いた。
「お前、最近仕事にも集中していないぞ。」
(そんな事、言われても。元はと言えば、お前のせいだろ!)
黒崎が自分に最初にあんな事をしたせいで、深谷に脅されているのだ。
「…深谷、黒崎さんと俺の動画か何か持っているみたいです。」
「動画?」
黒崎の眉間に皺がより、目を細める。
相変わらず怖い顔だ。
思わず目を逸らしてしまう。
「そんなものはない。」
「え?」
「はっ、そうか。話は読めた。」
黒崎は自分の中で何か解決したらしい。
ツカツカとカメラに近寄る。
「おい深谷。どうせ見てんだろ?お前の嘘はバレたぞ。金輪際、本田にこんなことはするな。」
「………黒崎さん、そのカメラはリアタイ配信じゃないやつです…」
「…」
本田の指摘に黒崎はムッと口を閉じる。
(ていうか…)
「嘘って…どういう事ですか?」
「動画なんてこの世に存在していないからだよ。」
「…え。でも、エレベーターでとか…」
本田は目を丸くして聞き返す。
「あれは嘘だ。お前を大人しくする為に、俺がそう思わせただけだ…。で、袋あるか?」
「…」
黒崎はカメラを強引に取りはずしながら、本田に尋ねる。
(…なら、なんで……)
安心感と微かな怒りが湧く。
「でもまさか、こんなふうに深谷に利用されているとは…。お前と俺のやり取りを見てカマをかけてきたってところか。……すまなかったな…。」
黒崎はつらつらと謝罪の念述べる。
余りにもあっさりとしていた。
「……そのせいで…そのせいで俺がどれだけ…」
「だから、すまなかっ……」
カメラをあらかた取り外したところで、黒崎は本田を振り返る。
そして目が合うと黙った。
本田が涙目だったからだ。
いい歳して人前で泣くなんて避けたいが、止められなかった。
「本田…本当に、悪かった…」
「……せ、…くださ、い…」
「…え?」
「責任取ってくださいよ!」
「…」
思わず怒鳴ってしまった。
だってこちらに怒る権利はあるはずだ。
黒崎にあんな事をされてから、自分の体はおかしい。
こんな、理想的な人生設計からそれ過ぎている。
黒崎は、本田を射抜くように見返すが、何も言ってはくれない。
———-
「本当に大丈夫か?」
「はい…あの、も、本当にそういうのいいんで…」
とりあえずもう何でもいい。
何でもいいから欲しい。のに、黒崎は何度も確認してくる。
本田はベッドの上で頭を掻きむしりたくなる。
ちなみにパンイチだ。
黒崎も眉間に皺を寄せた強面なくせしてパンイチで、絵面としてはアホくさい。
「良くない。お前は浅はか過ぎるぞ。大体…」
「も、もう…我慢させられ過ぎて辛くて、限界なんです!」
「っ!」
何でもいいから出しやがれ!
自分でも浅はかだとは思う。
(しかしこちとら禁欲何日かも分からんくらいな上、お前にやられてから変な性癖発症してんだよ!)
本田は黒崎に飛びかかった。
黒崎は思わずよろけて後ろに手をつき、本田が馬乗りになる。
「……」
(でっけぇ…)
ごくり。足に当たる感覚だけで分かる。
(早く…)
熱に浮かされた顔で黒崎のものに手を伸ばす。
「お前、因みに性病とか大丈夫か?」
「はぁ⁈」
伸ばした手を掴んで制し、黒崎は小馬鹿にしたように聞いてくる。
本田は思わず苛立った声を上げた。
「ふっ、いや、嘘。」
「!」
そこで視界が反転した。
いつの間にか立場が逆転し、本田がベットに寝てその上に黒崎がいた。
「ふっ、」
黒崎はキスをしてきた。
性格や性癖が見える、荒めなものだった。
これからの快感を待ち望み、頭がホワホワしてくる。
「いいか本田。」
「…ふぁっ、ふぁい…」
既に惚けた返事をする本田に、黒崎は苦笑いを漏らしていた。
「これは、その…ただの遊びだから…。ロールプレイ?だからだ、その、お前が自分の癖について後ろめたく思う必要もない。」
「…」
(あ)
黒崎は打って変わって、真剣なトーンだった。
「ほら、俺だって、お前見てこんななってるから、同じ。お前だけじゃないからな…」
確かに、黒崎のものも硬くなったいた。
(俺を気遣って…?)
きっと黒崎なりの気遣いなんだろう。
案外優しいところもあるようだ。
「はい。ありがとうございます。」
(……のはいいが…正直、俺の癖的には、もっとガンガンにきて欲しい…)
ちょっと萎えた。
こくりと頷くと、黒崎はふっと笑いまた本田にキスをした。
「…ふっ…っ!」
(あれ?か、噛まれ…)
黒崎はキスの合間にカプカプと本田の舌を噛んだ。
本田が噛まれる度にビクつき、涎が口の端から垂れる。
そしてキスをしながら、器用に本田の後ろを解かす。
ここで悲しい性癖がでる。
きっと黒崎は気を遣って最初は優しくきたが、こっちが本性だろう。
強引でサドっけがある。
そんな本性がちょこちょこ漏れ出ていた。
意識すると期待で息が上がる。
「ふっ〜〜ぁっ!」
そしてぐりっと前立腺をいじられ、本田は呆気なく吐精する。
「あ?早すぎだぞ。」
「だって…禁欲…」
「はぁ…、そうか…。まぁ、最初の10分は好きにさせてやる。」
「ぇ…っ、ん…っ!〜〜っ!」
(…っえーーー⁈最初の10分後はどうなるのー?♡……いや俺は何を…っっ!)
「ふぁっ♡!」
自分でも嫌になるが、一瞬ワクワクしてしまった。
そんな自分を戒めるが、再び余裕も無くなる程の快楽が襲ってくる。
「ふっ、そんなんじゃ、後がキツいぞ。」
黒崎が小馬鹿にしたように口の端をあげる。
ムッとするが、間髪開けずに挿入されまた直ぐに出してしまった。
「…あ゛っ」
黒崎が本田の中の狭さに小さく声を上げる。
堀が深い整った顔が快楽で歪み、色っぽい。
思わず手を伸ばすと、その手を掴まれた。
「手はここ。」
そして両手を顔の横で押さえ込まれた。
「ふっ、あっ、ぬ♡…っ〜〜っ!あぁ!」
そして動く。
下半身からの快感が強く、脳みそまで溶けてしまいそうだ。
「あっ、黒崎さんっ…ぁ♡っ、もっと、おくっ、してくださっ…〜〜っ!」
「はっ、注文が多いな。」
黒崎は思ったよりも扱いやすい。良いかも知れない。
主導権を握れる、自分専用棒、的な。
(あ〜、気持ちぃ…もう少し、強引でも良いけど、やっぱり扱いやすいのが一番…)
「…んっ、黒崎さっ、…っ、下、さ、さわっ、…っ!」
下への刺激を依頼すると、黒崎は素直に従って触ってくれた。
「あっ、〜〜っ!」
後ろを刺激されながら、くりくりと亀頭を弄られる。
ごぷりと何度目かの吐精だ。
「……はぁっ、あっ、…ん。」
始めてからまだ10分弱。
しかしそろそろ体の熱も落ち着いてきた。
そろそろペースを落としたい。
「ふっ、黒崎さん、そろそろ…ぅあっっ‼︎」
そろそろペースダウンで、と言おうとしたのに黒崎は急に今までの比ではなく奥をついた。
思わず、本田の身体がしなる。
「あっ、…んっ〜〜っ!」
しかも黒崎の動きが、先程よりも心なしが激しい。
「く、黒崎くんさん…っ、〜〜〜っ!ちょ、やめっ〜っ‼︎」
ぐいぐいと黒崎を押し返すが、黒崎は止まらない。
「ハァッハァッ…っ、黒崎さ…っ‼︎」
やっと反応しこちらを見たかと思えば、黒崎はギクリとするような黒い顔で笑っていた。
「10分経ったから、サービス時間は終わりだな。」
「あ…え?」
(10分…最初に言っていた、10分?)
きょとんとする本田を、黒崎はニヤリと笑った。
先ほどからその笑顔が黒いんですが…。
「ちょっ、わか、…っ、ぺ、ペース落として…っ、っ〜っ!」
黒崎は本田の意向を無視して、黒崎から逃れようと暴れる体を押さえ込んでキスを落とした。
最初よりも激しく、ジンと腰にくるキスだ。
「手はここ。言っただろ?」
「んっ‼︎」
仕置きと言わんばかりに、ぐりっと前立腺を刺激される。
ごぽりと、本田が吐精する。
「…はぁ、想像以上に聞き分けがないな。…やっぱ縛るか。」
「えぇ♡⁈…っっ‼︎」
反論する間を与えず、先程の弱い所をつかれた。
「ふぁっ〜〜っっ!」
本田がヒクヒクと余韻に惚けている間に、黒崎は本田を反転させる。
そして床に置いていたベルトを拾い上げると、手際良く本田の両手を後ろ手に縛る。
「あと、さっきから何勝手にいってんだ。」
「うっ!」
きゅっと軽快な音がして、両手がかっちりと縛られる。
(手慣れてる…)
そして再び、くるりと反転させられる。
「…っ、くるくる、人も転がして…何なんですか‼︎」
「はは、だって面白くないだろ。」
また黒崎は黒い笑顔で笑っていた。
「恥ずかしいこと言わせる時は、顔が見えないと。」
「え、なに?どゆ…」
(何言わされるの?)
そんなことを言われて恐怖とか羞恥とかその他色々あるはずなのに、自分の体の反応は単純だった。
下の方がきゅんとする。
体と頭が真逆の反応で混乱する。
「なんか…あぁ、いいもんあるじゃん。さすが変態。」
黒崎は鼻で笑い、ベット脇に置かれたローターを持ち上げる。
「ちっ、違いますっ!それは深谷がっ…ぁっ‼︎」
黒崎はきゅっと本田の乳首をつまむ。
思わず熱い声を漏らしてしまった。
自分の反応に、本田の顔が真っ赤になる。
それを見て黒崎がふっと笑った。
「ふっ、お前、乳首が雑魚だよな。」
(え、ち、くび、ざこ?何この人…。)
と冷静に思うのに。
「いくときはちゃんと、『いくの見て下さい』って言えよ。」
「ハァ⁈ばかですか!そんなこと…」
「言わなかったら、乳首にローター付けて、続行。そのまま続きやるからな。」
「っ!何…っ…っっ!」
まだ反論の途中だというのに、黒崎は本田を無視して急に挿入する。
軽く達しそうになるが、寸のところで踏みとどまる。
ほっと息をついたのも束の間、本性を露わにした黒崎の攻めが始まる。
「ハァッっ、…っ、あっ、…っ」
ベットがギシギシなり、本田の息は早々に荒くなる。
薄く目を開けると、こちらを射抜くような鋭い目と目が合う。
「っ!」
同じ男に組み敷かれて、手は縛られて抵抗も出来ず、されるがまま。
そのシチュエーションを再確認するだけで、きゅううっと後ろが疼いてしまる。
「…っ、さっきよりいいな。はっ、」
「ふっ、ちがぁ〜っ‼︎」
黒崎かがみ込むと、本田の耳元で囁いた。
「本田、っ、やっぱ縛られるの好きだろ?」
「んんっ!」
軽く中イキしてしまった。
そんな絶望感に浸る間も与えてくれず、黒崎は相わらず烈々と攻め続けてくる。
「…っ、今、出さずにいった?」
「ぅっ、んんっっ!…っいってなっ…ぁ♡〜〜っ」
本当はいきまくりだ。
だが安易に認めたくないし、あんな馬鹿なセリフも言いたくない。
「おい、また勝手にいったろ。ちゃんと言えよ。今度こそローター付けるぞ。」
「んゅっ〜っ!はぁっ、いって、に、…っな゛ぃいっ!」
「…ふーん…」
黒崎は片眉を上げてそういうと、身体を起こして動きだした。
今度は角度をつけ、的確にこちらの良いところをつく。
しかもやたらとじっとこちらを見つめてくる。
見透かすような視線が羞恥心を煽る。
「なっ、ふっ…〜っ、なに?」
「いや。…っふー、中イキしてる本田を見てる。」
「‼︎いって…っにゃいっって!」
「ぷっ、『にゃい』?あそ。」
吹き出して楽しそうに笑い、黒崎は更にまじまじと見つめてくる。
羞恥心で全身が紅くなり、火が出そうだ。
「見んなっ‼︎」
「別にっ、いいだろ。いってにゃいらしいから。」
「んぎっっ〜〜っ!」
黒崎にとっては、反応が見える分やりやすいのかも知れない。
その上動きやすいのだろう。
先程の比ではない快感で頭がおかしくなりそうだ。
「ぁ゛、きっ、〜〜っ!やめっ、もうむりっ!いった!いったからっ!」
「…はっ、いってないんだろ?何も出てないじゃないか。」
「うぅ、…っ!」
(だって、出さずに…)
黒崎はニヤニヤと笑いながら本田を見下ろしていた。
とっくに気づいているくせに!
「いってるの!いっ…っ、〜〜っ!メ、メスいきしてますっ!〜っ」
そろそろ色々限界で、目をぎゅっと瞑り真っ赤な顔で訴える。
感覚で、黒崎がクツクツと笑うのがわかる。
「ほんと?」
「ほ、ほんと…れっ〜〜っ、れす‼︎メスいきっ、してますっっ!ぁっ、」
「で?なんて言うんだ?」
黒崎は意地悪に笑うと、やっと動きを止め本田に次の言葉を促す。
「…っ、ぅわっ‼︎」
ぐっと黙るとコツンとつかれ、喉を見せてのけぞってしまう。
「い、…っ、いくの、見て、く…らさい。」
「ふっ」
(あ、)
ふわりと触れられる感覚。
瞑っていた目を開けると、黒崎はらしくなく柔らかい笑みを浮かべていた。そして身を屈めて、顔を寄せてくる。
本田の輪郭をなぞるように、優しく両手で顔を撫でると、そのままキスをしてきた。
最初のように荒々しくなく、優しく甘やかすようなキスだ。
頭がほわほわとして、心地良さで満たされる。
「…んっ、ふ、」
「はっ、よく言えました。」
そして優しいキスが終わると、またふわりと笑った。
胸がきゅっと締めつけられて、頬が赤くなる。
それは快感や羞恥からではない。
(う…嬉しい…)
喜びからだ。
胸が満足感で満たされる喜びだった。
「見ててやるから。いっぱいいけよ?」
「んっ♡…っあっ〜〜〜っ!」
そしてまた律動を再開した。
自分の性癖に気づいてからは、いつも達するときに何らかの後ろめたさを感じていた。
しかし今はそれがなかった。
ただただ気持ちよくて、満たされる。