02 その正体は
ちゅんちゅん、と小鳥が鳴く爽やかな朝。
フッと眼を覚ませば、カーテンの隙間から朝の日差しが降り注いでいた。
あー……腰、痛っ!
あぁ、そっか、あのまま寝ちゃってたんだなぁ……
なんて背を伸ばそうとして気付いた。
……いつの間に手ぇなんて繋いでたんだろう?
イケメンとしっかり繋がれている自分の手を見て首を捻るけど……。
うん、覚えてないな、だって寝てたもん。
むしろ役得くらいに思っておこう。
つーか……眩しい……今日も良い天気になりそうだなぁ。
布団干そう……そうだ、部屋の掃除もしなくちゃ……
そんなことを悶々と考えていれば……モゾリ、と動いた包帯だらけの身体。
んん?もしかして起きた?
「……ぅ…………」
「あ、起きたー?」
「…………?」
うっすらと開いた眼。
あはは!まだ寝ぼけてんのかな?
ボーっとしてる
そしてその瞳が私を捕えた瞬間。
クワッ、とまん丸に見開かれた。
「えーっと、大丈夫?」
「…………ぬ……」
「ぬ?」
ぬ?ぬがどうした?
と首を傾げれば……フルフルとその身体が小刻みに震えているのに気づいた。
ちょ、顔真っ赤になってんだけど!!
ホントどうしt…………
「ぬぉぉおおおおおおお!!?」
「!?」
突然響いた馬鹿でかい声。
……鼓膜が破けると思いました。
02 その正体は
「……」
まさに、空気を引き裂かんばかりの叫び声に唖然とするしかない。
しかも繋いでた手を物凄い早さで振りほどかれた。
痛い……耳が痛い!!
キーンってなってるキーンって!!
ちょ、しかもすっごく近所迷惑なんですけど!!
だってまだ朝の7時……っていうかなんなの本当に!!
イケメンはまるでサイレンと間違うくらいの悲鳴を上げた後、即座に身体を跳ね上げて、ベッドの端まで後退していた。
何?一体何なわけ!?
「おぉおおおおおおお主!!ななな何者でござるかぁあああ!!?」
「は!?こ、この家の者だけど……っ!?」
「な、なんと!?」
人の家に侵入しといて“何者だ!?”って……。
でもまぁ、私の言葉に自分の置かれた状況を知ったのだろう。
きょろきょろと部屋の中を見回して、丸い眼を更にまん丸にさせてる。
……やっぱ何度見てもイケメンだな、でも確かにどっかで見たことある。
ってかさ、“ござる”口調……?
え、時代劇ファン?
あの格好もコスプレか?
しかもなりきっちゃってる系?
うわぁ……イタイ。
格好良いぶん、余計にイタイぞこれ……(汗)
「こ、ここは何処でござる?」
「だから、私の家だって……」
「そ、某は何故おおおおお女子(おなご)の屋敷などに……―――っ!!」
「(屋敷?)あ、ちょ……酷い怪我なんだから動かないで!」
イケメン君は真っ赤になって興奮した様子だったんだけど……動いた拍子に傷が開いたんだろうな。
腕を押えて蹲ってる。
……馬鹿だ、この子。
せっかく格好良いのに……
大変に失礼な話だが、時代劇オタクな上に勘違い野郎でイタイ奴で馬鹿としか思えない。
つーか屋敷って、おなごって……
しかもさ、もしかしてなんだけど……
この子、照れてない?
え、やだぁそんな……私が可愛いからって照れなくてもぉ…………
……
…………ごめんなさい、調子に乗りました。
吐き気しました。
自分で言って鳥肌立ちましたすみません
と、とりあえず、開いた傷見なきゃね!!
と、手を伸ばしたんだけど……。
「だ、だだだだだだ大丈夫でござる…………っ!!」
拒否られた。
チッ、せっかく良い身体に遠慮なく触れr…………ゴホン治療してあげようと思ったのに。
「全然大丈夫じゃないでしょーが。ほら傷見せなさい!」
「うわぁあああああ!!そ、某は女子が苦手なのでござるぅううう!!」
“だから近付かないで下されぇぇええええ!!”
……と、顔を真っ赤にして叫ばれた。
あぁ、なるほど……女の子に免疫無いからずっと顔真っ赤にしてたのか何それ可愛い。
でもねぇ、それとこれとは話が違うんですよ、治療はちゃんとしなきゃね?
ならはっきりいってあげようじゃないか。
「近づくな?……無理!」
「!?は、破廉恥でござるぅうううう!!」
破廉恥って……。
思わず笑ってしまいそうになるのを押し殺して手当て開始。
男と言っても所詮怪我人、多少苦労したけど押さえこんで、手当て終了。
よし、御馳走様でs…………ごほんごほん。
「これで、よしっと……特に痛む場所とかあるかな?」
「……う、うむ……だ、大丈夫で、ござる…………」
「ちょ、そんな美味しい表情しないでよ。ま、大丈夫そうなら良かった。」
恥ずかしさからか、涙目になっているイケメン君に心の中でにやにや笑いながら……。
表面上は、ホッと安堵の息を漏らした。
……いくら浅い傷ばっかでもねー、家にあったの包帯と消毒液だけだし。
骨でも折れてたら、対処のしようがなかったしねぇ
「…………そなたが、そ、某の傷を手当してくださったのか……?」
「ん?まぁね。っていってもほっとんど傷は塞がってたし。大きいのはわき腹と左腕だけだよ」
「………………この着物も……」
「ああ、ちゃんと新しい奴だから安心してね」
「……」
多少、まだ顔が赤いけど……スウェットを見て何やら考え込んでるイケメン君。
ほんと、顔だけはすっごくカッコイイんだけどなぁ……。
まさかこんなイタイ子だとは…………。
私がそんなことを考えているとも知らず、イケメン君はベッドの上で突然の正座。
え、ちょ何!?
とか思ってたら、頭を下げられた!!
「ちょ……」
「某の傷を手当てしていただいたとも知らず、なんと無礼な態度を…………どうかお許し下され」
「い、いやそれは別に身体で払っていただけr…………ゲフン、気にしないで!」
「それから……その……傷を手当てしていただき、誠に感謝致す!!」
思わず本音がでてしまったことに気付かず、イケメン君は再び頭を下げる。
いや、ほんと別に気にしないでいいんだけどなぁ……
逆にこんな丁寧にお礼言われたらむず痒くなりそうだ。
「わかった、わかったからほら、横になる!」
「……申し訳ございませぬ」
「いいから、ほら、ちゃんと横になってないと傷も治んないでしょーが!」
「ぬ…………」
寝かせる為に、身体を軽く押して、ベッドへ。(ああ役得)
まぁイケメン君もさすがに起きっ放しはきつかったのか、大人しく横になった。
……叫ぼうとしたから、急いで口を枕で抑えつけたけどね
「あ、そうだ、名前聞いていい?」
“ちなみに、私は名字名前ね!”
にっこりと笑ってそう言えば……見開かれるイケメン君の眼。
え、私なんか変なことでも言ったかな?
「……名字殿は、武家や貴族の出でござったか」
「は?いやいや……普通の一般家庭ですけど?」
武家って。
なんでそういう発想になるんだろう?
うわぁ……本気でヤバイのかなこの人……。
やっぱ警察に連絡s…………
「姓があるということはどちらかの出でござろう?おぉ、申し遅れた。某は……真田源二郎幸村と申す。」
……………………What?
あっれぇ?
なんか今有り得ない言葉が……
いやいやいやいやいや、ないないないないない。
それは、無い。
「あはは、ごめん耳が…………もう一回イイカナ?」
「?……真田源二郎幸村、と申す。」
そっかそっか。
真田……源二郎…………幸村……………………
……
…………
……………………え
っ幸村ぁぁああああ!!?
頭の中を駆け巡ったのは昔ハマったゲーム
“戦国BASARA”
そして真っ赤な鎧を身に纏った青年の姿
今、まさにその青年が目の前で……
キョトン、とした顔を晒していた。
END
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さくらだんご