私の彼氏はマダオだ。無職ではないがほぼ無職だし、パチンコ好きだし、酒も好きだし、死んだ魚の目だし。しかし見知らぬ他人を助けるくらいには優しさを持ち合わせており、腕っ節もたち、本人曰くたまに煌めく目をするときがある。真のマダオではないが7:3くらいでマダオだ。
そんな彼氏はここ最近『ラブチョリス』という所謂乙女ゲームにハマっている。3次元の彼女が既にいるのに2次元にも彼女を作ろうとするとはそれ如何に。でもまあ所詮ゲームだしな、と彼氏に対しては特に狭量でもない私は放置していたのだが、そうもいかないことをやらかすのが私の彼氏なのだ。
「脱いだんだ」
「いや、その」
「画面越しの女とヤろうとしたんだ。へぇ」
「…………」
何かと縁のある真選組の知り合いである沖田君に『ラブチョリス』の大会があることは教えてもらっていた。彼も乙女ゲームにハマっていたことは意外だったが、そのお陰で彼氏の恥を知れたことは幸いだ。このマダオは自分に不利なことは話さないので告げ口をしてくれる存在は非常に助かる。
「別にね? 2次元に彼女つくろうがそれは銀時の勝手よ。次元が違うんだもの。好きにすればいいわ。次元が違うんだもの」
「そんなに強調することないだろ! あいつだって生きて、」
「でも脱ぐのは違うよね?」
「……」
「ピ●子が生きていると言うならこれって浮気よね? 私は彼女が生きているとも死んでいるとも思えないけど、銀時にとって生きている存在ならそれは浮気になるよね?」
「…………」
冷や汗を流して黙り込む彼氏に「どうなの?」と無表情で首を傾げる。マダオと目が合うことはなく、しばらく沈黙の時間が流れた。時計は見ていないからわからないが、5分か10分か経った頃、ようやくマダオは恐る恐るという様子で口を開いた。
「……お、俺が一番惚れてるのはお前だよ?」
「じゃあ二番目はピ●子なのね」
頭を抱え出した彼氏に本当マダオだな、と急激に頭が冷えていく。まるでダメな男を略してマダオ。神楽ちゃんのセンスはピカイチだ。これ程までマダオという単語が似合う男もいない。
しかし彼氏への愛も冷めたわけではない。こんなことで冷めるならとっくの昔に関係は終わっている。
どうしようどうしようとブツブツ呟いている彼氏の隣に膝をつく。頬に手を添えて顔を上げさせると真っ青だった。
別れたくないんだったらバカなことをしなければいいのに、と思うのだけど、そう思ってくれるのは純粋に嬉しい。
「銀時、許してほしい?」
「オレガワルカッタ」
「片言が鼻に付くけどそうね。私も銀時のこと好きよ」
「お、俺もお前を愛して」
「だから」
許される雰囲気になってきたからか、マダオの顔が緊張から解けていく。この男が私に惚れているのはわかりきっているため言葉を遮って——柔らかな笑顔を浮かべて首筋に包丁を突きつけた。
「ヤンデレルート、入る?」
「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!」
見事なスライング土下座を見せつけてくれた姿は、誰が見ても10:0でマダオだった。
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