彼氏と楽しく飲めるカップルっていいよね、なんて友達と話したことがある。友達にしろ恋人にしろ、好きな人と飲むお酒は一等おいしいものだ。それは同感する。
 でも私と銀時の場合、楽しいのは精々1時間だけだ。銀時がお酒に弱いわけではない。ただ私の方が少しばかりお酒に強いから、変な意地を張った銀時が私と同じペースで飲んで先に潰れるだけのこと。毎回自分の配分を考えて飲めと言っているのに聞かん坊だ。後片付けをするのは私なのに。

「シたい……させてくれよォ……」

 そして銀時は悪酔いするとやたらと絡んでくる。先ほどからずっと「先っちょだけだから」だの「ゴムつけるから」だのろくなことしか言っていない。
 そういうときは相手にせず、妙ちゃんが近藤さんにするように頭を躊躇なく叩くとゲロを吐いて大人しくなる。このゲロの後片付けが面倒で面倒で、私の酔いはすっかり冷めてしまう。せっかく銀時と飲むお酒はおいしいのに、こういうところがマダオがマダオたる所以なのだろう。

「ほら銀時どいて。布団先行ってて」
「ヤらせてくれよ……銀さんの銀さんは限界なんだよ……」
「しない。あーもう、髪にゲロついちゃうよ」

 机にぶちまけられたそれを床に落とさないように雑巾で抑える。今度からはビニール袋に吐かせようと思いながらゴミ箱に流し入れていると、マダオが脱力したように背後からもたれ掛かってきた。普通に重い。空いた片手で頭をペシペシ叩く。

「邪魔。どいて」
「……病むほど愛してくれねェの?」

 つい動きが止まってしまった。以前乙女ゲームでやらかした銀時にお灸を据えるために言ったことを覚えていたらしい。
 赤い顔をごまかすように銀色のもさもさを強く撫でる。愛してる愛してる。その場を流す言葉は顔の向きを変えられて言えなかった。銀時の顔が近づいてくる。甘えるような目に囚われそうになり、咄嗟に雑巾で銀時の顔を覆った。
 ……あ、これゲロついてるやつだった。

「うぷ、」
「待って待って自分のゲロでもらいゲロしないで。あと私にぶちまけたら一生セックスしない」

 銀時が雑巾ごと口を抑える。そして「べんじょ……」と短く言うと覚束ない足でトイレへ向かった。床には努力の甲斐虚しく、机から垂れたゲロがポタポタ落ちていた。






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