私にはコミュニケーション能力というものがない。
それは並盛中学風紀委員長の妹というだけで恐れられるから、というのもあるけど、やはり性格が一番の理由だろうか。
「——で? また引かれたの」
応接室の机に頬杖を付き、呆れたように私を見る兄。その視線に堪えかねた私はさっと顔をそらした。
「だ、だって……」
「別に君が他人に引かれるのは勝手だけど、その度に僕の所に来るのは止めてくれる」
「……友達いないんだもん」
「僕の知ったことじゃないね。それに君も群れるのは嫌いなんだから気にすることないだろ」
「……そういう問題じゃない」
確かに群れ、というか人混みは嫌いだ。話すのは二人までが限界だし、その上10分以上話してるとストレスを感じてしまう。これは群れ過ぎると蕁麻疹を起こす兄の遺伝だろう。
何故こんなところが似たんだ。まだ唯我独尊の性格が似れば人との接し方で悩まなかったのに。
「どうせ愚痴を言うつもりなら書類を片付けながらして。今日は草壁がいないんだ」
「ふーん。風邪?」
「病院」
「……」
咬み殺されたのか……草壁さん何したんだろう。
不思議に思いながら兄の机に置かれた書類の山のひとつをソファの前の机に置く。書類にペンを滑らせながら思い出すのは教室での出来事。
「はあ……」
思わずため息を溢していると兄が面倒くさそうに眉を寄せたのが見えた。しかし何も言わないところを見るに愚痴を言っても構わないらしい。では遠慮なく。
「……今日クラスの皆でカラオケに行くって言ってて、私もそれに誘われたんだ。でも人が多いのは無理だし、大勢の前で歌うなんて論外だから断ろうと思ってて」
「……」
「でも何て断っていいかがわからなくて……皆楽しみにしてるのに変な断り方して雰囲気悪くしたくないし。迷ってたら行く流れになっちゃって、慌てて「歌下手だから無理」って言ったんだけど、皆全然気にしてない感じで……だから「本当に下手だから、ごめんね今日は帰るね」って言ったらすごい気まずそうな顔された……」
「そう」
「……何て断ればよかったのかな」
「用事があるって言えばよかったじゃない」
「! な、なるほど」
パッと顔を上げて兄の顔を見る。顔にバカじゃないの、と書かれてるけど気にしない。
「今度からはそう言えばいいのか…ありがとう、恭兄」
「別に」
何だかんだ相談に乗ってくれるから頼っちゃうんだよなあ。この兄はそれをわかってるんだろうか。
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