うわぁぁぁん!!

 そんな悲鳴をあげながら応接室に飛び込んできた我が妹に、並盛最強風紀委員長は目を瞬かせた。

「——赤ん坊に脅された?」
「うん、こわかった……」

 ぐす、と潤む目に濡らしたタオルを押し付けながら頷く。"赤ん坊"という言葉で雲雀の頭に浮かぶ人は一人しかいない。

「ふーん……」
「いきなり銃突きつけてきて「お前雲雀の妹らしいな。ファミリーに入れ」って……ファミリーに何。意味わかんない……怖いし」
「銃くらいで泣かないでくれる。大袈裟だね」
「恭兄、人って撃たれたら死ぬんだよ?」
「知ってるよ。バカにしてるの」
「少し」
「久々に咬み殺してあげようか?」
「ひっ、ごめんなさい……!」

 ポロポロと新しい滴を目から溢すユキにため息をつく。雲雀とてファミリーの意味がわからないほど鈍感ではない。何度か変な連中と戦っているし、何より未来へ行ったのだ。マフィアの存在は認識している。

「……まさか君まで誘われるとは思わなかったな」
「へ、何か言った?」
「何も。ああ、赤ん坊なら気にしなくていいよ。君は弱いからね」
「な、何でそう言えるの?」
「さあね」

 そうは言ってもあの赤ん坊のことだ。何か考えがあってユキを勧誘したはず。
 雲雀がどうしたものかな、と考えているとユキが涙声であのさ、と声をかけた。

「あの赤ちゃんと恭兄って知り合いなの?」
「……ただの知り合い」
「恭兄が怪我をして帰ってくるのは、あの子が原因なの?」
「さあね」

 もしかして、これが原因か。
 ユキは昔から妙に勘が鋭い。それに助けられたこともあるが、本人に自覚はなく、精々テストの山を当てるくらいにしか普段は発揮しないからだ。
 しかしそれに赤ん坊が目をつけたとしたら。ユキを利用しようとするのなら、その時は──咬み殺す。

「……とりあえずポット借りるね。恭兄もお茶いる?」
「うん」

 この子は、僕のなんだから。






←←
▲top

ALICE+