11月11日はポッキーの日。それがいつから浸透したのかは知らないが、この子は知らないと思っていた。いや、信じていた、の方が正しいかもしれない。何故なら何事にも関心を示すあの子供は「ポッキーの日? 何するの?」と小生意気な友人に尋ねる。そしてその友人はきっと、絶対、「特別なゲームをする日だ」と面白半分に教えるからだ。その被害を受けるのが私だと見透かした上で。

「はい、ポッキーあげる!」

 ……ああ、ついにこの日がやってきてしまった。
 小さいようで意外と大きい手でそれを差し出すゴンを前にそう思う。ちらりとゴンの向こう側にあるドアを見ると小生意気な子供代表のキルアがにやにやした笑みを浮かべて覗いていた。『余計なこと言ってないよね』『余計なこと"は"言ってねえよ?』と目で会話をしたが早々に意味がないものだと諦めた。悪戯モードに入った子供は面倒くさい。

「今日はポッキーの日なんでしょ? ポッキーゲームしようよ!」
「……ゴンさんゴンさん、その言葉の意味をおわかりでしょうか」
「知ってるよ? さっきキルアが教えてくれたもん!」

 ゴンは自信満々に胸を張るが、そうじゃない。そうじゃないんだよ。意味をわかったんならそれを自分に置き換えて想像してくれ。そしてその結果どうなるのか考えてくれ。
 しかしそう言ったところで頑固なゴンは意見を変えないだろう。たまには融通を利かせて欲しいと強く思う。

「ねえしようよ。オレ初めてやるから楽しみなんだ」
「私も初めてだよ」
「そうなんだ!じゃあ初めて同士だね!」

 先に咥えていいよと言われポッキーを口に突っ込まれる。その際苦しみの声が出たことをご機嫌なこの子は気付いてくれただろうか。
 一体これは何のプレイだと思ったが、ここまでくればもう諦めるしかないだろう。少しだけ付き合って途中で折ればいいだけのこと。

「じゃあいくよー? せーのっ」

 可愛らしい掛け声と共にゴンがポッキーを咥える。約10cmの距離にある顔に思わず血が上ったが、すぐに下がった。
 ゴンの食べるスピードが速すぎる。
 ぽりぽりぽりぽり!と凄まじい勢いで近付いてくる顔に恥よりも先に怖さが勝った。意図せずポッキーが折れ、「あ」と声が出た。

「やったー! オレの勝ち!」

 腰が抜ける。両手を挙げて喜ぶゴンには悪いが頭突きされるんじゃないかと思った。ゴンの頭は硬いから本当に怖かった。しかしそれも時間が経てば恥ずかしくなってくる。だって、顔、近かった。
 頬に手を当てて冷やしているとゴンが顔を覗き込んでくる。なに、と恨みがましい視線を送ると「えへへ」と照れたように笑い。

「ちょっとドキドキしたね」

ちょっとどころじゃねーですと言わなかったのは年上の意地だ。それでもこの気持ちをどこかに吐き出したくて、ドアの外で爆笑してるキルアを殴ろうと腰を上げた。






←←
▲top

ALICE+