Blanc Noir


不思議の世界で


青空が澄み渡る某日。
とあるマフィアとの抗争でボスであるたった一人の兄を守るため、凶弾に撃たれて世を去った私だったが、ひょんなことからこの世界”ツイステッドワンダーランド”に転生していた。
前世の家族や友人たちもあの頃の記憶を有して同じ世界に転生しているのだから驚きだ。
あの時と違うことといえば、マフィア家業が国の運営に変わったことだろうか。

————私、沢田 千代———改め、チヨ・サワダは、このボンゴレ王国の次期十代目国王、ツナヨシ・サワダの実妹にして、——————第二王子である。

前世で誰よりも早く世を去った私に対して、周りは超が付くほどの過保護となっており、王家という立場にある為どうしても舞い込んできてしまう政略婚の材料にさせないために……という、国としてそれでいいのか?な理由である。
私としても知らない人に嫁ぎたいわけでもないし、男として男として過ごすのは前世でも(訳あって)親父に男として生きるように言われていたので、さして問題もなかった。

生まれ変わって早十数年。
ネトゲや国務に勤しむ、前世とあまり変わり映えしない生活を送っている私は、この時期の名物である人魚の上陸に今年も特別講師として参加していた。

他国と比べると国自体の規模は小さいかもしれないが、”世のため民のために”を信条に少数精鋭で築き上げられてきたこの国は、民たちの笑顔と活気が溢れる比較的豊かな国である。
そんなボンゴレ王国は、傍にある珊瑚の海を主とした陸にあこがれる人魚達の上陸を手助けする、世界でも有数の訓練校を運営していた。

海と陸の文化の違いなどを短期で学ぶために建てられたこの国立養成学校は、人魚たちからは”陸の訓練校”と呼ばれている。
基本的にこの時期は、陸の学校に通うべく上陸してきた十代のうら若き人魚達である。
実生活などの陸の文化は、彼ら彼女らと比較的年の近い者が行ったほうがいいだろうという考えで人選されている。

ぞろぞろと上陸してきた人魚達は、あらかじめ海の中で飲んだ”人になる薬”のおかげで陸の人間と同じ姿をしている。
歩くことから教えたほうがいいが、基本全員全裸のため、各々に軽装を配る。
性別ごとに人員を割き、服の着方を教える。
海の役所から届いている帳簿の人数が揃ったところで、講師補助の一人である友人からマイクを手渡される。

「皆さん初めまして、陸へようこそ。短い期間となりますが、国を代表して皆さんを歓迎します。今回の講師を務めるチヨと申します。わからないことがあれば私やほかの講師に、何でも聞いてくださいね。」

こうして短い訓練が幕を上げた。

- 2 -

*前次#


ページ: