Forget me not/kn

同じくウェディング企画にて書かせていただきました。

▼以下本文

今、私達が居るのは日本から離れた、海の綺麗な島の教会。彼が両親と関係が薄いことは聞いていたので、式は二人だけで執り行う事に決めていた。

廃れた教会の窓からは繋がって一緒になった空と海が見える。

「なぁ、名前」
『うん。どしたの、シッマ。』
「もう、世界に俺らしか居らんみたいやなぁ」
『…うん。』

誰も居ない教会に並んで腰を降ろす。私は白のワンピースで、彼は白いポロシャツに、同じ色のスリムパンツ。

「…俺さ、こうやって遠いとこまで来てさ、名前に綺麗なドレスとか着せられへんでさ、名前に迷惑かけてばっかやと思うねん。」

ふ、と顔を向けると彼と眼があった。

「こうやって、全部白で纏めても、ほんまはドレス着たかったんちゃうかな、って。…他の男やったら家族も友達も呼んで、もっと名前が祝福されたんちゃうかな、って。」

彼は眼を逸らすこと無く、話を紡いでいく。

「でも、もう俺の隣にお前以外のヤツが立ってるの想像出来ひんねん。」

「やから」

私の薬指が陽の光を反射してきら、と光った。

「俺と、結婚してください。」

ちかり、世界が光る。
彼にこんな顔をさせるのはきっと世界中に私一人だけなのだ。

ふふ、と笑みが零れる。

『喜んで、シッマ。それを誓い合う為にここに来たんでしょ?』
「ん、せやな。その通りや。」

先程までのしおらしい彼は何処かに引っ込んだようで、彼は満足げに答える。

『では、新郎新婦は誓いのキスを。』
「ふん、しゃあないな。」

彼の鮮やかな瞳が近付いて消える。
きっと私は、今日のこの空を、海を、彼のを、一生忘れる事は無いのだろう。

だから、忘れないでね。
この空を。海を。───私を。


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