風そよぐ/tnpr:財前
ぺら、
小説のページを捲る音がいやに響く。彼が小説を読む姿はまるで絵画のように華がある。
部活動生の声や木々がざわめく音はまるで主旋律を支える伴奏でしかない。
…ぺら、
「…そないに見られとったら読みにくいんやけど、」
転調。
『えっ、あっ、』
ぺら、
『.…ごめん』
「いや、別に謝らせたかった訳ちゃうし…ま、ええけど」
やばい。タイミングを見計らったかのように部活動生は休憩に入り、風は止んだ。息の詰まるような静寂が図書室を包む。
私も自分の作業に戻るがなかなか集中できない。
本のカバーで作った栞とか誰が使うねん…。小学生じゃあるまいし。
…いや、案外かわいいかもしれない。そう思うと集中できてきたぞ…うん、静寂も無視だ、無視。
「なぁ」
『はいっっっっ!』
「……これ、借りたいねんけど」
『あ、手続き…えっと、何組何番?』
「七組三番」
サ行で三番なん? はや
『うん…はい、できたで。』
「おおきに」
嵐は去った。今日の分のノルマをしなければ…
「なぁ、それさ」
まだおるんかい。
「俺が手伝ったら早く終わる?」
『え?』
「図書委員やから作り方知っとるし、自分さっきから全然進んどらんやん。」
そう言うと財前くんは隣の椅子に座り、黙々と作業を始めた。
これが陽キャの距離感なん? こわ…
「どう」
ひら、と財前くんが掲げた栞は凝ったリボン結びがされていた。
『わ、凄い。手先器用やねんなぁ』
「せやろ。結び方教えたる」
『ほんま? 出来るかわからんけど…』
***
『…これで最後や! めっちゃ助かったわ、ありがとう!』
「いや、ええで。手伝いたいから手伝っただけやし。」
『これリボン余っちゃったな、置いといてええんやろか』
「…いっこ貰う」
そう言って手に取ったのは赤いリボン。
「手ぇ出し。」
言われるがまま手を差し出すと、するする、と私と彼の小指は赤いリボンで結ばれた。
『え、』
「ごめん、恥ずかしいことした…」
しゅるり、とリボンをほどく彼は指先まで赤く染まっていた。
「なんでもない、でも忘れんといて。」
彼は出口へと向かい、優しく扉の閉まる音がした。
行き場を無くした手…と私、はただただぽつんと座っているだけだった。
***
「おー財前! どうやった! 喋れたか?」
「謙也さんうるさいっすわ。」
「気い立ってるちゅうことはなんかやらかしたんか?」
「別になんもしてへん」
「いや、した! 絶対したな! 何してん!」
「なんもしてへん言うとるやろ」
…次、話す時はどんな表情を見せてくれるだろうか。
「なーなー! 何してん!」
「やからうるさいっすわ」