テディベア/anst:天城燐音
なんだか今日はダメな日だった。行く先々で嫌なことがあったし、それでイライラして失敗しちゃった。今もそのミスを取り返すために黙々とキーボードを打つ。
『はぁ〜あ...』
「お〜い名前チャン、メンブレ中か?」
いきなり目の前がブルーライトたっぷりのパソコンから、大きいふわふわのテディベアに変わった。
『燐音さん...』
「姿勢悪くなってッから、これ抱いとけ、な?」
そう言うと、私が戸惑っている間にぎゅむぎゅむと大きなテディベアを机と私の隙間に押し込んだ。
人間はなぜふわふわを摂取すると癒されるのだろうか...燐音さんが押し込んだテディベアを撫でると、落ち込んでいた気持ちが和らいだ気がした。
『ありがとうございます...ちょっと回復しました』
「ん。これで回復すんならちょろいもんだわ。」
いつの間に隣に座っていたのか、ぽんぽんと頭を撫でられる。柔らかい微笑みと相まって、どんどん暖かい気持ちで満たされていく。
自分の単純さを見透かされているようで恥ずかしい気にもなるが、それでも嬉しいものは嬉しい。
「コーヒー、ココア、その他。どれがいい?」
『え?』
「差し入れ。ガンバってるから♡」
『燐音さん...!!』
こういう時に優しくしてくるのは涙腺にくるのでやめてほし...いや、ありがたい。
『でも水筒に暖かいココア既にあるんですよね』
「は?まじかよ、空気読めね〜っつか流石だわ。」
シンプルな魔法瓶の水筒を指さすと、燐音さんはさっと水筒を開けてココアを一口飲んだ。
『熱いですよ!?』
「言うの遅ぇって...」
ふーふーとココアを冷ましながら燐音さんはもたれかかってきた。
「俺っち暇だしここ居るわ、名前チャン応援隊。」
『一人なのに隊...?』
「細けぇことはいいの!じゃ、ガンバレ♡」
『ちょっと、寝る気ですね?』
肩から伝わってくる温もりに、すっかり心も元気になっている気がした。
『...よし、もうひと頑張り〜...!』
小さく呟いてから、私は作業を再開した。
私が落ち込んでるって聞いて探してくれたこととか、慰めるためにあの大きなテディベアをわざわざ買ってきてくれたこととかは後から聞いたナイショの話。