にちようび・ひる
 レディは、彼の学校の生徒の家で暮らすことになった。僕はその家までついて行かず、駅の周りの商店街を散策していた。漣さんが僕を迎えに来たのは、僕が本屋でぱらぱらと本をめくっていた時だった。けっこう熱中してしまっていたからか、背後にいた彼の気配に僕は気付いていなかった。
「……『かわいい猫図鑑』?」
「……っ、びっくりした、」
「何、やっぱりレディが恋しい? ペットショップでも見てく?」
「……そういうわけじゃ、」
「あはは、良かった。猫にお前取られるんだもん。てか、俺んちの大っきいお猫様はお前だもんな?」
「……そろそろ人間扱いしてくれません?」
「ばーか、とっくに人間だっての。ただの猫ちゃんとはホテル行きません〜」
「え、家に戻るんじゃないんですか」
「せっかく外出たんだし、たまにはいいだろ? 大丈夫だよ、へばっても抱っこしてちゃんと家まで運ぶから」
 少しずつ昔の話を挟んでくるのはやめて欲しい。したり顔の彼は僕から本を奪い取ると、さっと本棚に戻してしまった。それであっという間に僕の手を取って、笑うのだ。レディに似た、子猫の無邪気な瞳で。
「な。行くぞ」
 ……。
 はい。


おしまい!

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