プロローグ的なあれ

よく分からない夢を見る。
自分にそんな記憶はないのに、いつも繰り返し見る夢。
起きれば何を見ていたのか忘れてしまって、でも確かにあった記憶のような夢。鬱陶しいはずなのに、何故か消えて欲しくないと思うのだ。

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何もない。私には目的も、何もすることがない。

長い学長の話のあと、私はクラスへと向かう。席は窓際、上々の席だ。あたたかくて寝そう。
担任の先生の挨拶、ガイダンス、教科書配布…と一日目はクルクルとハイペースに過ぎていく。本日のスケジュール消費が終わったときに事件は起こった。

足早に教室から出ていこうとするエルーンの男子。長いのか髪は高めの位置で固定していて、女子のようにも見える。
そして彼の顔を見た瞬間、私の手は何故か、立ち去ろうとする彼の腕を掴む。身体は思考よりも早く動くものだ。自分でも何がしたいのか分からない。不思議だなあと他人事のように思っている間も身体…この場合は口が、動く。

「好きです」

そう伝えた瞬間に彼の顔は困惑の色に変わり、周りの視線すべてが私に集まった。

高校一年生、春。

何もない。私には目的も、何もすることがない。
そう思っていたのに。